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インターネット会報2003年12月号  
【論説】 「玉音」を修得して「鶴の巣籠り」を吹きましょう  

以前にもこの「玉音の練習法」を尺八吹奏研究会会報に掲載しましたので覚えていらっしゃる方があるかも知れません。  今回、再びこのテーマを取り上げるのは、「玉音は練習さえすれば誰にでも修得できる」という事実が未だに普及していないからです。  勿論、「玉音」の技法などは要らない流派の方にとっては要らないものなのでしょう。しかし、自分の流派のレパートリーに「玉音」が必要な曲が入っている場合、これは是非とも獲得しなければならない技術です。  聞くところによりますと、未だに「玉音は1000人中1人ができるくらいの難物である。」という俗説が流布しているようです。  おそらくこの言葉を言い始めた方は「玉音」で苦労されたのですね。そして、人に教えたくなかったのでしょう。この言葉のせいで何百、何千の尺八愛好家が「玉音」を諦めことでしょう。  

しかし、冷静に考えてください。「玉音」はドイツ語のr(アール)の発音とほとんど同じです。そして一度このrの舌の奥の動きを修得できると、その振動を舌先にもってきて「フラッタータンギング」も出来ますし、喉の奥での柔らかな「グルーミング」(玉音に近い)もできます。  戦前のドイツ人はこのrを使っていました。いまだかつて「この舌を震わすrは2000人に一人しかできないのだぞ」と言ったドイツ人がいたでしょうか。これは、練習は要りますが、みんなできて当たり前の事柄なのです。  そう考えると「玉音は難しい」のではなく、「玉音は正しい練習さえすれば誰にでもできるもの」なのです。  前置きが長くなりましたが、以下、話を続けます。  普通の曲を吹いている限りでは全く必要ないのですが、古典本曲の秘曲扱いの曲や現代音楽の尺八パートではよくこの「玉音」が出てきます。私の属する琴古流古典本曲の中では、 「巣鶴鈴慕」の中に出てきます。 この曲はたいへんよくできていて名曲の一つだと思うのですがあまり演奏会では聴きません。おそらくこの「玉音」が難しいのだと思います。  そして、この玉音の合理的練習法、いいかえれば誰にでも時間と努力さえあれば出来るという練習法は、あまり知られていないのではないでしょうか。 「玉音」を支障なくだすことが出来ればこの「巣鶴鈴慕」ももっとみんなが楽しめると思います。  

「玉音」は西洋音楽で言う「フラッター・タンギング」や「グルーミング」に当たります。  これは舌を息の流れを少し借りてふるわす奏法です。コツさえつかめれば難しいものではありません。  また、まだ「玉音」を必要でない初心者の方も、今から修得しておくことは望ましいことだと存じます。 (玉音の具体的練習法)  ここで述べる方法は私が「玉音」を修得した経験によります。  今から三十数年前のまだ中学生だった頃のことです。国語の教科書で”美しいドイツ語”についてのことが書いてありました。美しいドイツ語は特に「R」の発音が大切だとありました。そして、外国人にとってはこの舌をふるわす「R]がとりわけ難しいとありました。その後に、必ず「R]の発音が出来るようになる方法も書いていました。  単に国語の教科書の文でしたが、何を思ったのか、読んだ次の日から練習を始めました。おそらく家族のものは「何を始めたのか」と不思議な気持ちだったと思います。  

その方法と言うのが「うがい」による方法です。  最初十分な量の水でうがいをします。 そして毎日少しずつ水の量を減らしていくのです。 あわてず、出来なければ出来る量の水でうがいをします。 それを数カ月続けます。 最終的には、全く水無しでうがいの舌の動きを獲得するのです。  私の中学時代はよほど暇だったのでしょう、2、3カ月毎日毎日うがいを続けました。そして、最後には水無しでうがいの舌の動きが出来るようになりました。  人によっては数週間で出来るでしょうし、また1年ほどかかるかも知れません。いずれにしても必ず出来ることと思います。   この時獲得した「R]の発音は身についていまして、後からフルートを習っているときにたいへん重宝いたしました。  そして、この「R]の舌の動きが出来ると、その動きを舌の前の方へ持っていき、鋭い「玉音」もだせますし、また喉の奥で震わせますと猫みたいな柔らかい「玉音」もでます。(猫の名前に「玉」が多いのはそのせいでしょうか)  いずれにいたしましても、ぜひこの機会に、 ”うがいによって”、玉音を修得して下さい。そして、玉音の技法の入った「鶴の巣籠り」などの名曲を吹いてください。  また、自分の周りに玉音ができる人が居なくて実際に玉音を吹いている様子を確認してみたい方は、遠慮なく拙宅へお越しください。  

(連絡は必ず往復ハガキでお願いします。) 〒590-0531 大阪府泉南市岡田2-190 貴志清一