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インターネット会報2004年2月号 【論説】             

五線譜から尺八へ採譜するときの、吹きやすい律さがし  貴志清一  

この論説は尺八吹奏研究会会員からのご質問へ回答(会報182号)です。  さっそく「五線譜から採譜するときの、吹きやすい律さがし」について述べます。  五線譜を十分理解し、尺八の律に詳しければよろしいのですが、なかなか世の中そうもいきません。  ここでは、不十分ですが私の分かる範囲でこの問題のヒントになることを述べたいと思います。  

結論から言えば、
1.五線譜にでてくる音を拾って、そのオタマジャクシに対応する尺八音を当てはめ、まず吹くことです。   山本邦山氏の「五線譜による尺八教則本」にある五線譜対照表を参考にします。
2.歌謡曲等において、尺八は歌よりも1オクターブ高いですから、その場合はひらった音を1オクターブ上げて書き直します。
3.そのようにして書いた尺八譜を上手く吹ければそれで良いし、運指やメリが多く吹きにくければ2律、3律、場合によれば5,6律上げ下げした律を書いて吹きやすくすることです。    

この1,2、3の作業をすることが、五線譜を尺八で吹く時の吹きやすい律さがしなのです。このことに関しては、なんら秘密や、口伝など存在しません。  そして、この作業をしているうちに自然と慣れてきて、作業自体が速くなってきます。  しかし、普通、書き写したりしなくても五線譜を目で見ただけで吹きやすい律が分かってくるのには多くの時間がかかると思います。 【余談ですが】  今「書き写したりしなくても五線譜を目で見ただけで分かってくるのは多くの時間がかかります」と書きましたが、ではこの作業を何曲ぐらいすれば良いのでしょうか?という問いが当然でてきます。     それは、当然個人差がありますが、30,40曲程度では決してありません。五線譜を何十年も見慣れた人で、尺八も堪能な人ですと数十曲ほど吹くと書き写し無しでふけると思いますが。  けれども、五線譜に明るくない人はもっともっと時間がかかると思います。  でも、五線譜を見て直ぐに尺八でもっとも適した調を判断し吹くという能力は普通の尺八愛好家には決して必要のないものです。  安心して、時間をかけて何回も書き写して、書き直してください。 時間をかけて書き写すひとときは俗世間を一瞬でも忘れ芸の道に没頭できる有り難い時間だと思いましょう。  

実際のところを申しますと、私個人としては五線譜も尺八譜も困らないのです。かつて三木稔氏が地方の創作オペラに関わられたとき尺八パートがあり、それを私が担当したことがあります。勿論そのパートは五線譜で書かれていました。しかも一尺八寸では吹きにくい音があったので完全4度楽譜を上げて二尺四寸管で吹きました。  リハーサルの後だったか、本番が終わって打ち上げの会場だったか忘れましたが、氏は 「長管で吹いていたね。そんなに音量が出るはずないものね。」と私に言ったので、「そうですね、あの音域では吹きにくかったので」と答えました。  そのとき、心の中で“音量がでなくても、あのメロディーは一尺八寸での音が欲しかったのだな”と思いました。  この話は、私があまり五線譜に困らない一つの例として出させていただきました。。  

私が五線譜に強いということで、羨ましく思う方がよくいます。  しかも、その言葉の裏に、あたかも自然と五線譜が読めるようになったので羨ましいという気持ちが窺われるときがあります。  しかし、凡人の私ですので、何の苦労もなく五線譜が読めるようになったのではありません。  中学校になっても、どのオタマジャクシが(ド)なのかも知りませんでした。何か分からないままにブラスバンドに入ってしまって初めてトランペットを手にしました。それからが大変で、楽譜というものがあり、それが読めなければ音楽が作れない。これは大変だと言うことでオタマジャクシのしたにカタカナで(ド)(レ)(ミ)を書きました。何百曲書いたでしょうか。そして音符を読むには写譜が良いと言うことで、楽譜があるにも関わらず何百、もしかすると小さなメモ譜も含め何千も写譜しました。それに学生時代はブラスバンド、オーケストラでフルートを吹いていましたのでそれこそ毎日五線譜を読んでいたわけです。ちょっとした編曲を頼まれれば10パートあれば十曲書くことになります。  そして、今でもたとえば月に2,3度地元の中学校にボランティアで合奏指導に行きます。当然各パートの書かれたスコアを見ながら指揮をしますから五線譜から離れられません。  それでも、複雑な臨時記号のある初見曲はいまだに難しいものです。  ですから、私の考えでは、五線譜を見て直ぐに尺八でもっとも適した調を判断し吹くという能力は、尺八だけを練習してきた普通の愛好家にとって大変むつかしいものですし、また決して必要のないものだと思います。  そして、もし五線譜を目で移調して即吹くことを羨ましく思う方がいましたら、その人に「あなたは五線譜について私のように何千時間もの苦労をしてきましたか?」と言いたいのです。実際に言ったことはありませんが。  

話が、大いにそれてしまいました。 では、実際の曲で手順を示します。 @.「影を慕いて」の場合 (以下、インターネット会報では著作権の関係で省略)  元になりました会報182号をご希望の方は、2004年2月10日頃までに下記へ切手400円分を同封の上、「会報182号希望」と明記して下記へお申し込みください。また、実際に五線譜からの採譜、ご説明希望の方は、尺八と楽譜持参の上拙宅へお越しください。  (連絡は必ず往復ハガキでお願いします。)
〒590-0531 大阪府泉南市岡田2-190 貴志清一