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インターネット会報2004年6月号
【解説】 「歌口を強く唇に押しつける癖の直し方」 貴志清一

【質問にお答えして】  本会会員の方からのご質問です。  質問をさせていただきます。  私は、歌口を強く唇に押しつけないと、良い甲音がでません。このため、常に強く押しつけて吹いているので、近頃は唇に歌口の跡が常に付いている状況です。歌口をあまり強く押しつけると、尺八の自由が失われて良くないと聞いております。また、見た目にも良くないので、何とか直したいのですが、何かこの癖を直す良い方法があれば、ご教示をよろしくお願いいたします。    

私自身は尺八を全く押しつけないで吹いておりますので、改めて「こういうことで悩んでいる方もいらっしゃるのだ。」と言うことを再確認いたしました。本来、直にお会いしてアドバイスをしなければならないところですが、とりあえず文章にて参考意見を述べさせていただきます。  さて、歌口を強く唇に押しつけると、音を自由自在にコントロールすることが難しくなります。  音を自由にコントロールしたい・自分の思い通りの音色を出したいと言う気持ちが強い場合、この癖は直しましょう。  しかしながら、この癖を直そうという“強い意志”が無い場合、おそらく直らないと思います。  話は横にそれてしまいますが、全ての習い事において、強い意志がなく、「上手くなりたい」と言う気持ちが「あこがれ」の域に留まっていても、ある人にとってはそれはそれで良いと思います。  しかし、どうしても「上達したい」と思うならば、有りとあらゆる機会を見つけて人にも聞き、関連した本も読み、時間と手間を惜しまず練習しなければなりません。そしてその努力が、時には一般の人の目には特異に見えることもあるかも知れません。  私に関しては、尺八上達は「あこがれ」の域をでなかったかも知れませんが、ある一時期は確かに上達への強い情熱が支配しておりました。  練習時間が十分とれないときなど、周りが田圃の駅での時間待ちに誰もいないことを確認して畦に降りていき、雪の吹きつける中で尺八を吹いたこともありました。他人が見たら「電車が来るまで10分も無いのだから、そこまでしなくても…」と思ったことでしょう。  今は、幸か不幸か、残念ながらそういう情熱は薄らいできています。  また、本会の会員様ですが、1,2年前にご自分の吹き方の確認と、アドバイスを希望されて北海道から拙宅まで日帰りの飛行機でお越しくださいました。恐らく、強い「上達への意志」をお持ちだったことと拝察いたしております。  

 前置きがかなり長くなりました。それというのも、尺八の悪い癖を直すには「上達への」強い意志が必要だからです。それなくしてはどんな素晴らしい師匠の元へ稽古に行っても所詮同じことだと思います。  それでは、この強い意志があるものとして話を進めましょう。  私の述べることは、数多くのアドバイスの一つにであって、完璧な指導では無いこと、そしてこれから述べることは本来、面と向かって時間をかけないと伝わりにくいことをくれぐれも忘れないでください。  

○歌口を強く唇に押しつけないための一つの練習法
1.乙り(都山:乙のハ)を長く吹く
2.乙りを吹きながら、だんだん尺八を唇から離していく   当然、音は途中から鳴らなくなります。でも気にしません。
3.もう一度乙りを吹きながら竹を離していきますが、今度は音が鳴らなくなる手前で離すのを止め、そのまま吹き続けます。  ※この時、たとえ音が鳴らなくなる手前であっても、常に最高の音色を出すよう心がけてください。そうしないと「下手に吹く」ための練習になってしまいます。
4.上記の2,3の練習を甲のハローと吹き甲ロで繰り返す
5. 同じく り乙チー と吹き、乙チで繰り返す。 同様の手順で「尺八吹奏法T」の「毎日のウオーミングアップ」の音型で練習する。  
6.いつも練習する曲(本曲、古曲等)で唇に押しつけないように練習する。
7.特に甲で、歌口を強く唇に押しつける癖が出てきたときには、必ず直ちに吹くのをやめる。心を落ち着けて、止まったところから練習を始める。
8.この訓練を1年、5年、と続ける。  以上が私の指導する「歌口を強く唇に押しつけないための方法」です。  お近くに、尺八の良い指導者がいらっしゃいましたら流派に関わらず指導を受けて下さい。また、埼玉県から私どもの大阪は遠いですが、関西方面にお出向きの節はお立ち寄りください。           〒590-0531 大阪府岡田2-190 貴志清一