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インターネット会報2005年2月号

【解説】 「古管・名管による尺八の歴史」を拝読して
  小出虚風
 
 
 表題の記事を大変興味を持って拝読しました。
 真の尺八の本質を知る上で貴重な試みと思います。ご承知かも知れませんが、約10年ほど前 和田真月師も、所有される古管を約10本、有名演奏家あるいは製管師に依頼し「古管を聴く会」を開かれました。私は残念ながら出席できませんでしたが、その時の資料を見ながら、今回の「古鏡、竹隠、竹翁の古管・名管」の記事を拝見しました。貴志氏も必ずや「古管を聴く会」で吹かれた諸氏と同一の気持ちで吹奏されたことと思います。ここのその時の各師の感想記録がありますので、要約させていただきます。
 
A師…機能と効率を追求する現代の傾向は尺八界にも認められ、その流れを否定するものではないが、その発展は必ずしも尺八音楽の感動を保証するものではない、古い竹を手にして改めて思いいたった。
 
B師…現代尺八が音楽性(たぶんに西洋音楽の影響を受けすぎた)を追求する余り、無くしてしまったものがしっかりと残っている。
これからは現代尺八の良いところは残しつつ、古管から無くしたものを取り戻せるよう精進して参りたい。
 
C師…地無し尺八は一本ごとにそれぞれ異なる強い個性を有した楽器であることは確かである。もとは地無し尺八で吹かれてできあがった古典本曲においては、その楽器の強い個性により尺八独自の奏法が生み出されたと考えられる。これは「楽器」「曲」「奏法」が互いに作ったり作られたりする関係にあると考えられる。これら古名管が実際に演奏される機会が多く催され、本当の地無し尺八の良さが多くの人に知られ甦ることを夢見ている。
 
D師…古管の中からとろとろと流れ出た音色は慈音とでもいうか、あまりにも優しく時として厳しく感じた。古管と格闘などと野暮ったいことを考えていた私を恥ずかしくさせた。
E師…現在多くの調律管はパワーのある音が鳴るように製作され、音程・バランスともどもに大変良くできているように思うが、それを得るために音味等、古管の持つ非常に優れた部分を切り捨てたように思える。尺八奏者、製管師は古管のすばらしさをもう一度認識し、演奏ならびに製作に際して考え直す必要があると強く考えさせられた。
 
 以上が古管を吹かれた各氏の意見を要約したものですが、異口同音に古管の中に秘められた尺八本来のわび、さびを甦らせるべく吹奏された気持ちがいたいほど伝わってきます。
「世に演奏家は数多い。しかし古管を吹きこなせる人物はそう多くはいない。」とは和田真月師の言葉です。私は去年3月、京都明暗寺にて和田師の地歌「残月」を拝聴しました。使用尺八は琴童銘一尺八寸、その吹奏はまことに素晴らしく、妙音一音一音に綴られたこの一曲にうっとりとなり心を打たれました。
 実はこの一管、和田師が手にするまでは私の先輩 故N師が所持されていて、その頃師のお宅を訪れるたびにこの尺八に幾度となく息を入れさせてもらっていました。なかなか鳴らしにくいという印象を持っていました矢先、上記のような見事な吹奏を聴き、驚き入り、終了後師に古管を吹く「コツ」を聞きましたところ大変貴重なご返事をいただきました。
「私は三浦琴童の人格、芸風製管技術を信じかつ尊敬しております。この念で2年間吹き込みました。」とのこと。頭の下がる思いでした。

 尺八の神髄はやはり古管の持つわび・さびの追求にあると思います。工具や設備の発達に伴い製管技術はますます進歩することでしょう。
 きれいな音を、大きな音を楽々と……こうした尺八がどんどん作られていくことと思います。こうあっても、尺八本来の音色の原点が失われることのないよう守って行かねばなりません。
 一方、近代音楽としての尺八もまた発展させなくてはならないことを思うと、尺八を区別して扱うことも必要だと思います。このためには尺八の名称を定義化し、地無し尺八・地塗り尺八、あるいは古典尺八・現代尺八(ビニル管・木管等含む)などの呼び方で区別し、世間一般の人々に対して誤解や混同を防ぐことも考えた方がよいと思います。
 将来、木管やビニルパイプ管等が学校教育等で多数出回れば、これが本当の尺八の音色かと思う人が出てくることを懸念します。
 みなさまのご意見を伺いたいたいと存じます。
 

【DVD「古管・名管演奏会」へのご感想】

 お正月よりご希望者に配布いたしておりますDVD「古管・名管演奏会」ですが、こういうマイナーで一般の尺八愛好家でも興味を示すことは少ないDVDでも、少しばかり感想をいただいておりますのでそれを紹介させていただきます。
 
(F氏)
 「山谷菅垣」「下り葉」の曲で使われている“古鏡”管は琴古流初代・黒沢琴古と同時代の人とのこと。尺八吹きの希求する「良い音」はこの時代に既に存在し、現代まで受け継がれていることに対し心強い思いがしました。
 
(H氏)
 ふくよかで、かつ余韻嫋々たる「古鏡」、瀏亮と響き渡る「竹隠」の音色に深く感動いたしました。
 
(K氏)
 古管は、稲垣衣白先生の「浦本浙潮先生」の中の写真などを見て、どんな音なのか常々興味を持っておりました。
 今回のDVDでその一端に触れることができ、とても感激しています。
「古鏡」は想像していたとおりの音でした。柔らかく艶が有りますし、音に気品がありますね。その他、竹隠もそれぞれの古童管も素晴らしいものでした。
 一尺六寸管の一城銘は、私の沢仙銘と似た響きがあります。一城氏もたしか竹仙系だと思いますが、沢仙も竹仙系です。
 
(事務局より)
 K氏より沢仙銘のお話が出ましたので、ちょうど沢仙銘・尾崎尺八工房の尾崎氏よりご感想をいただいておりますので紹介させていただきます。
「古管・名管での音をすてきな演奏で拝聴いたしました。それぞれの管での味の違いをもっと近くで、生の音で聞きたく思いました。私も尺八作りの一人として、良いものを作ることに関心のある毎日です。
 また、(尺八吹奏法Tの中の)眼下息道法の極意の一端も拝見でき、さらに認識を深めるのにとても役立ちました。まだ努力中にて、ますます精進してゆきます。」
 
(O氏)
 古鏡はその曲に音が打ち溶けていく感じを受けました。
 竹隠は切れ味の鋭い音で迫ってくる感を持ちました。
 古童は柔らかく歴史を感じました。
 竹翁はまだまだ音が出ていくぞ、という秘めたる力を感じました。
 一城は聞き慣れた音で、急に現代に戻った感がありました。
 演奏会場で聞いていたらもっと良かったかも知れませんが、DVDも充分に役立ちました。ありがとうございました。
 
(H氏)
 とても素晴らしいDVDをありがとうございました。
 地方にいるとなかなか古典本曲の演奏を目にする機会がありません。
そんな中でこのような貴重な資料に巡り会えてとても嬉しく思いました。
 内容的には本当に満足で私の宝物として何度も繰り返し拝見させていただく所存です。
 さて、私は以前、歩き遍路で四国を巡ったことがあります。その際、尺八を献奏しておられる場面に出会いました。読経しながら横で吹奏しておられるのを聞いていて、その音色に感動して嗚咽で読経が続けられなくなった経験があります。これが私も是非尺八を学びたいと思ったきっかけでした。 (中略)
 いま私は尺八の魅力にとりつかれて片時も管を手放さずに持ち歩いているほどです。
 今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
 
(N氏)
 古鏡管が飴色に光っていたのに驚きました。
 古鏡の幽玄な響きも良いのですが、竹隠のきれいな音の方が私は好きです。DVDは映像なので尺八の吹き方が見られ、非常に参考になりました。
 
※上記感想のDVD、在庫があります。よろしければお申し込み下さい。
DVD 「古管、名管演奏会」
使用尺八:古鏡、二世古童(竹翁)、三世古童、竹隠、一城
曲目  :琴古流本曲「山谷菅垣」「下り葉」「巣鶴鈴慕」「鹿の遠音」
     箏・尺八合奏「千鳥の曲」「春の海」
 尺八:貴志清一 箏:菊苑馨
【DVDお申し込み要項】
頒価 :DVD 1枚\1000  送料200円 計1200円
葉書に「住所、氏名、入用枚数」を記入の上、
「DVD古管、名管演奏会〜希望」と明記し
〒590ー0531 大阪府泉南市岡田2ー190尺八吹奏研究会 貴志清一宛、ご投函下さい。