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インターネット会報2005年6月号
 
 尺八吹奏時に「唇が歌う」ことについて
                             貴志清一
 通常の息でも尺八が朗々と鳴っているとき、唇がジュワっと振動している感覚を体験したことがありますでしょうか?  おそらく、百人・千人の尺八愛好家がいたとしてもこの感覚を体験している人はそう多くないはずです。
 お風呂上がりに尺八を吹いたとき、立派な音をだせる奏者であれば乙ロなどを吹いたとき、二孔の人差し指がビリビリと感じその振動を体験することは多いと思います。じつは、その感覚がまさに唇において起こるのです。
 勘違いしてはいけないのですが、全開音などで変に唇がふるえてしまうのではないのです。 ただ、理想的に尺八が響いたときに唇の息の出るところの周りがビリビリと感じるのです。
 
 わたくしも27年間尺八を吹いてきましたが、最近やっと始めてこの感じがつかめました。 尺八ではありませんが、フルートの神様、マルセル=モイーズが言った言葉に理想的に音が鳴りに鳴ったときを「唇が歌う」と表現しています。この言葉は20年近く気になっていた言葉でした。残念ながらフルートでは未だにこの感覚が十分つかめませんが、尺八において分かった次第です。
 
 ところで、この唇が歌う、すなわち尺八を理想的に鳴らす方法を述べた人がいるのです。先年、惜しくも他界されましたが、岡本竹外師がその方です。師は「普化尺八吹禅上の参考事項」にこう述べておられます。
「・・・即ち吹禅の技法は、下唇の内側に舌頭を押し当て、成るべく歌口の内側に横長に押し当てて(歌口の幅を一杯に活用)気息は柔らかく吹き込む。・・・口腔をなるべく広闊にして、柔らかく尺八の頭部を構成してると考えるべきである。」
 
 文字だけでは誤解も招きやすいのですが、舌頭を下唇裏に触れるようにすると故岡本氏に関しては、私の言う「下歯による気流の乱れをさける」ことがおできになりましたでしょうし、歌口の幅を活用すると尺八の共鳴自体が唇に感じビリビリとした感覚で朗々と鳴るのです。
 ちなみに私は、舌頭をあらかじめ下唇裏に触れさせておき、発音と同時に離します。これはアンブシュアの柔軟さを維持し、口腔内を自由にするためです。
 この感覚を体得できれば、単に音を出すことに関してはもう悩まなくても済みます。
 これからは、いかにして生き生きとした生命をもった立派な音を作るかが一生の課題になります。 また、音が十分鳴ると、自分自身の音楽性(精神性)が問われてきます。これも一生の課題だと思います。
 従いまして、いろんな機会を見つけてこの良く鳴る奏者の演奏を注意深く観察してください。見本があれば自分も近づくことができます。
 尺八愛好家のみなさん、頑張ってください。
 最後に、くれぐれも言っておきますが、この朗々と鳴る感覚は、強い息でバーバーうるさく鳴る尺八の音ではありません。御注意下さい。
 
(ご質問等は往復ハガキで下記へお願いします。) 
 〒590-0531 大阪府泉南市岡田2-190 貴志清一宛