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インターネット会報2005年12月号
 
 (所感)
   箏・尺八学校公演(小学校)を明日にひかえて  貴志清一
 
 明日、2005年12月5日(月)大阪府の公立小学校2校(高学年)で箏・尺八演奏会をさせていただきます。
邦楽の良さも知ってもらうためにボランティアとして尺八を演奏します。ありがたいことに箏の師範の先生も協力していただけます。 「さくら」を合奏し、つづいて「鹿の遠音」を独奏します。ちょうど初冬ですので奈良公園の“鹿の角切り”の話も交えて演奏する予定です。その後、箏で「世界に一つだけの花」というポピュラーな曲を弾きます。邦楽で、コードを基本にした、リズミカルな曲をするのはどうかとは思いますが、邦楽器を身近に感じてもらえればとのことです。その後、「春の海」を演奏し、少し早いですがお正月の気分を味わいます。
 最後に宮田耕八朗の「雨の水前寺」を吹き、西洋のフルートに対抗するわけではありませんが、こんな早い運指も可能でこんな曲想の曲も演奏できることを知ってもらいます。

 日本に小学生は何百万人いるのでしょうか、その中のほんの百人、2百人に対してですが、実際の邦楽に接してもらえればと思っています。 小学校公演は現在、2,3年に一回ほどしかありませんが、明日がその日です。 思えば、10年前に、やはり小学校公演をしてその時の感想を尺八吹奏研究会会報に載せているのを思い出しました。 それを読み返しますと、そのころの自分のより前向きな邦楽への姿勢が分かり少し複雑な気持ちになりました。
 参考までに引用させていただき、尺八愛好家の方が積極的に小・中学校に出かけていって児童・生徒に邦楽の良さを感じてもらえればと思います。
 (1996年の会報より)
    琴・尺八の小学校公演を終えて
 私事にわたって恐縮ですが1996年2月3月、小学校で「琴・尺八による邦楽鑑賞会」と題しまして2つの学校で演奏をいたしました。 邦楽のよさを知ってもらおうということでここ2、3年学校公演をいたしております。もちろん回数はすくなく年に1、2回程度ですがとにかく琴も尺八も現物を見たことがない子供がほぼ100%という状況ではこういう公演も大事かと考えております。 尺八というと何か古くさいというイメージがあるというのはもう年輩の人の感じ方で、今の子どもたちは尺八のイメージすら持っておりません。テレビの時代劇でも虚無僧はほとんど出てきませんし、勿論戦後のしばらく見られた虚無僧の托鉢姿も今はありません。
 ですから、今の子どもたちにとって尺八という楽器は西洋のオーボエやファッゴトぐらいに身近ではなくなってきているのです。 しかし、それだからもう尺八は滅びゆく楽器だと思うのはよくないと思います。
 今の子どもたちが尺八に対してほとんど予備知識がないからこそ、 ”まったく 目新しい楽器 ”と感じることができるのです。 子どもたちの目の前で、尺八でもって本当に魅力的な演奏をすれば、鑑賞後「なんて、いい楽器だろう」  「なんて、いい音が出るのだろう」  「ぼくも、吹いてみたいな」等
尺八に対して、確実によい印象が残るはずです。そして、そう感じた子どもたちの何パーセントかはもう少し大きくなってから尺八を習おうとするでしょう。
 そのことが日本の唯一といってもよい独奏吹奏楽器の尺八の発展につながるのだと思います。
 ただ、そのためには、やはり尺八界全体の吹奏レベルを上げる必要もあります。
 私自身、振り返ってみますと、尺八をはじめて17年ほどになりますが、ようやくこのごろ何とか一定の水準で吹けるようになりました。それは、お世話になったお師匠さんのおかげですが、もう一つ、尺八の理論を自分なりに考え、また、音のコントロールのための練習曲を自分で考え、悩み、実践してきたからだと思います。
 よく「お師匠さんはなぜこんなことを教えてくれなかったのか。もっと早く気がついてれば、無駄な努力はしないで済んだのに」と思うことが度々ありました。

 おそらく私の師事した師匠は、いわゆる名人タイプで、尺八の音を出すのに苦労なさらなかったに違いありません。しかし私のような飲み込みの悪い、努力しなければどうしょうもないタイプの尺八吹きも存在いたします。ですから私と同じような苦労をしている尺八愛好家のためにと思い、未完成ですが、「尺八吹奏の基礎」「毎日の日課」を著し、出来るだけ配布してきたわけです。 

 本研究会も、その精神でやっており、その一環として、自分の吹奏の未熟さも省みず、今回のような、学校公演もしているわけです。自分が名人のように上手くなるまで、また、本当に魅力的な演奏が出きるようになるまでは待てないわけです。少しでも、万分の一でも尺八の為になればと考え今回のような学校公演の会を持ったわけです。会員の皆様方も、お近くの小中学校での演奏を積極的にしていただければ有り難いと思います。
 さて、お琴を弾いてくださったのは本研究会の会友でもあります 中川 艶美子(菊苑 馨)師です。以下、曲目を紹介いたします。
 ・「春の海」 宮城 道雄
 ・「鹿の遠音」 琴古流尺八本曲 (抜粋)
 ・「さくら変奏曲」
 ・「雨の水前寺」宮田 耕八朗 
 ・「コンドルは飛んでゆく」     以上の5曲でした。
 私の演奏はさておき、とにかく珍しい楽器なので子どもたちは本当に真剣に聞いていました。このような地道な活動も意味があるのかないのかふと不安になる時もありますが、一つの経験として、本物の楽器を使った演奏会という意味でも何らかの価値があると思います。お琴の先生には本当にボランティアで快く引き受けてくださり、感謝に耐えません。
(以上引用終わり)
 
 今読み返しますと、10年前はまだ「尺八吹奏法T」ができていなかったことが分かります。また、不思議に明日の学校公演の曲目が10年前とほとんど同じだということも驚きです。
 自分自身の尺八の未熟さも、もしかしたら10年前と同じなのかも知れません。現在52才ですが、口腔内の変化、たとえば歯茎の後退による吹きにくさも実感し若干吹き方に工夫をしなければならない辛さも感じるようになりました。しかし非常に辛いのは、曲に対する若いときにあった瑞々しい感性が薄らいできていることです。作曲者の曲の出来・不出来は措いてもその曲に対して感激が薄らいでいるというのでしょうか、いわゆる“手垢がついてきて”ただ、吹くだけという、およそ音楽的ではない様相を呈して来ている曲もあります。
 ただ、その中でも私にとって毎日吹いても飽きない、ちょうどお米のご飯のような素晴らしい曲もありうれしいことです。それはたとえば「巣鶴鈴慕」「鹿の遠音」「下り葉」「山谷菅垣」などの琴古流本曲です。どうしてなのでしょう、何百年も育まれてきた古典本曲の素晴らしさなのでしょうか。私が近い将来尺八をある日突然、ぷっつりと止めることがないと思えるのもこの尺八古典本曲のおかげかも知れません。

 今年のインターネット会報も今月が最終です。
 お読み下さっていますみなさま、よいお年をお迎え下さい。(貴志)
 
【連絡】
 12月の「尺八の吹き方クリニック」の日は12月18日(日)、場所は大阪府泉南市です。ご希望の際は、「吹き方希望」と明記の上ハガキをお送り下さい。折り返しご連絡いたします。