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インターネット会報2006年7月号
 
         尺八の難しさについて
                                                                     貴志清一
  私はスポーツには詳しくはないのですが、よく言われることは、 「スポーツにおいて、基本になるフォームを繰り返し練習して体で覚えてしまうと、いざという時には正しいフォームが自然に出てきて、体がスムーズに動いてくれる」といいます。
おそらくそれは本当です。尺八も同じで、基本的な吹き方がたたき込まれていればどんな曲であっても音が自然に出てきます。

  野球では、ある程度のレベルに達すると、打つときに球が止まって見えると言われます。尺八も習い始めたときにはとても吹けなかった音型が、ある時から軽々と吹けるようになります。
しかし、そこに到達するまでには、さまざまな「困難」と「試練」を経験しなければなりません。苦労を嫌って「安易」なことや「ごまかして吹く」ことをしていては、いつまでたっても高いレベルに到達することはできません。ツのメリ音がむつかしいからといって、それを練習しなければ尺八音楽の神髄の古典本曲や古曲は一曲たりとも吹けません。

  すべての物事は困難の段階を経て、やがて容易になります。何でも初めのうちは難しいものですが、慣れてくると易しく思えてきます。
尺八の道はある意味では辛く厳しい道ですが、その厳しい過程に大きな喜びが生まれます。一つ一つ練習の課題を克服していくたびに達成感を感じます。これが尺八を吹く楽しさでもあります。
ただ、西洋楽器でもそうなのでしょうが、特に尺八界で気になることがあります。それは、不合理な練習方法・教授法によって困難の段階が一生続いて尺八吹奏が容易にならない場合が多いことです。
学習者は大きな情熱を持って何年も練習を重ねているのに、いっこうに上達しないことがあります。流派の名取りでも「荒城の月」や「月の砂漠」といった曲を朗々と吹けないという例をたくさん知っています。
最初は情熱を持って練習するのですが、中メリも出来ないのに「六段の調べ」を練習させられたりしますと、もうだめです。喉が鳴る悪い癖をつけたり、自己流の不安定なメリ音でも平気になったり、そしてその「下手な」演奏を自分が一番知っているという状況になりやがて情熱を失ってやめていったりします。
残念なことや、もったいないと思う話は数限りなく聞いてきました。
正しい腹式呼吸。開放音での練習(口を真一文字に引かない)。開放音での曲(童謡等)メリ音の合理的練習。音域を広げる。息の流れの確認(特に下歯による気流の乱れをさける)。古曲の練習と平行して古典本曲を練習。特殊音の練習(コロ、玉音、ムラ息等)音の柔軟性の獲得(毎日のウォーミングアップ)・・・

これらを合理的に教授していくのが師匠の役目だと思います。
 そう思って、せめて文章でだけでも伝えたいといまから17年前に邦楽ジャーナルに「尺八吹奏の基礎」を4回連載させていただきました。また、6年前には「尺八吹奏法1」をまとめ1000部ほど配布して来ました。 なにぶん文面だけですので私の意図がどれだけ伝わったのかは分かりませんが、尺八界に何万分の一かは貢献できたと考えております。
尺八上達は、未だに私にとっても困難ですが、これから合理的な確実な練習を重ねて向上していきたいと思っています。 
 
【お知らせ1】
 大阪府貝塚市立善兵衛ランド主催「星空コンサート」のお知らせ
出演〜尺八:貴志清一 箏:岡部雅浪
日時 2006年8月5日(土)午後7時30分より
演奏予定曲目
 琴古流本曲「巣鶴鈴慕」(鶴の巣ごもり)
 「乱輪舌」「荒城の月」「春の海」「萌春」「キビタキの森」他
入場無料
お問い合わせ貝塚市立善兵衛ランド(рO72−447−2020)
 
【お知らせ2】
 7月の尺八相談は2日でした。8月は追ってお知らせします。