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 インターネット会報2007年1月号


【年頭所感&「大甲の音の実際」】

 明けましておめでとうございます。 本年もよろしくお願い申し上げます。

貴志清一

 尺八吹奏研究会・会報の第一号が1995年に出されていますので本会も12年目を迎えます。

 いきなり天文の話で恐縮ですが木星の公転周期が約12年ですので本会が発足した年、さそり座に居た木星が星占いの星座をめぐってまた帰ってきました。月日の経つのは本当に速いものです。

 その間、尺八の合理的な吹奏理論はほとんど変わっていません。この変わらない理論を自分に当てはめ自分なりに努力してきましたので、単に音を出すだけでしたらもう悩むことはなくなりました。その分、まだ不合理な吹き方で悩んでいる尺八愛好家のためにご質問にお答えしたりしてきました。

 しかし、音楽的・芸術的な面から自分自身を振り返りますと、あまりの進歩のなさに愕然とします。こういう感性に関わることは自分自身の内面の問題ですのでなかなか難しいものです。それでも自分の才能の無さばかり言っていてもだめで、最近反省したことがあります。それは、ここ十年間あまり本曲を何も考えずに吹き散らかしてきたことです。

 毎日の日課として「鹿の遠音」や「下がり葉の曲」等々琴古流本曲をただ通して止まらずに吹くことに専念してきました。上手く吹けようが下手であろうが、とにかく吹き通すことしかしませんでした。演奏会などではお褒めの言葉をいただいたりして余計に自分が見えなくなり、誉められたのは尺八の伝統の持っている力であって、自分の演奏が高い水準にあったからではないということが分かりませんでした。

 そして、やっとそれに気づいたのはここ2,3週間前なのでした。
 自分の描いている風に吹けなければ、止まって、もう一度吹いてみる。次の行も自分の思っているように吹けなければそこを何回か練習する。そして、一度通して吹いてみる。・・・・そういう練習を始めています。

 この辛い練習が続くかどうか?もしかすると妄想という障害物が立ち現れて自分の演奏に目をつぶり「自分は上手い」と自己暗示にかけ自分を客観的に見ることをやめ、また元の木阿弥みもどって吹き散らかすようになるかも知れません。
 この妄想を克服して今後10年吹ければ、少しは尺八古典本曲が分かってくるのではないかと思っています。
しかし、今年で54歳、十年後は64歳で果たして尺八を吹ける状態でいられるのか定かではありません。しかし、そういうのは天に任せて、とりあえず毎日毎日練習していきたいと思っています。尺八を専業とはしていない多忙な生活で竹に息を通せない日が2,3日続いたりしますが、がんばりたいと思います。

 ところで 故山口五郎先生より印刷だけの年賀状をいただいたのは平成11年で8年前になります。何かのインタビューで師は「ここ10年ほどは苦しかった」とのべていらっしゃいます。 凡人の私などにはその真意など理解できないのですが、自分の反省から考えて、やはり師は常に自分自身に厳しい耳でもってご自身の演奏を検閲しておられたのではと私は考えます。加齢、そして体調不良により自分の思い描くようなきわめて高い芸術的水準に達しない自分自身を苛んでいたのでしょうか。そのことで「ここ10年ほどは苦しかった」のかも知れません。

 私など凡人は自由に音が出て、割合いい音がでてそれで「自分はなかなか吹けるぞ」という妄想にとりつかれ、まあ幸せな尺八軌跡だったのかも知れません。 しかし、それでは高い芸術的域には達しませんので、ほんの少しでも自分に厳しい瞬間を増やして練習していけたらと、新年を迎え考えている次第です。

 会員の皆様も、竹道、お励みください。

(埼玉:N氏よりのご質問)

会報211号の「しりとり『赤とんぼ』」は参考になった記事です。さっそく12調子の譜面を作り、吹奏の難易度や情感の好み等で順番付けをしながら楽しんでいます。甲乙の取り決めに少し悩みましたが、一尺八寸管の実力を再認識しています。メリや中メリの出し方もさることながら、カリ戻しの大切さを実感しています。

 これと関係しますが、一尺八寸管ではどこまでの高音が可能なのでしょうか?
 昔、入手した教本には、チメリ、チ、ヒメリ、ヒの大甲まで解説したものがあります。私は大甲のレが限界だと思っています。また音楽的な要求から大甲のツを出したいのですが、上手く出す方法があればご教示ください。

大甲の音の実際

貴志清一

 ご質問にお答えするには、実際の音を聞いたもらうのが一番だということで、大甲のヒまで録音したテープを進呈いたします。   ここで注意すべきは、大甲のレですら、音楽的にあまり必要ないということです。尺八では大甲のレはかなりの流速で吹かねばなりませんので音楽的に表現するには不適当です。まあ、効果音といったところでしょうか。
古典本曲にはもちろん出てきません。

 大甲のレ(G)  =一、二孔開け

    レ中(F♯) =一孔開け

    チメリ(A♭)=一二四開け

    ヒメリ(B♭)=一四五開け

    ヒ (C) =二開け(二のみ開け)

 このように録音しています。ただし、チは経過音としてでますが、あまりはっきりしません。

 また、ツの大甲(F)ははっきり出ない音です。  この大甲ツをしっかりした音でほしいときは、七孔尺八を使うしか方法はありません。

 さて、この大甲のヒを出していますと、唇が硬くなり音質が悪くなります。くれぐれも注意してください。  以上、お答え申し上げます。


[ご質問](K氏より)

 小生の友人で十年くらい尺八を吹いているのに甲音が出せないでいるものがいます。吹き込む息の速度を上げれば甲音になるとアドバイスしてもダメなのです。もし効果的な解決法があればお教え下さい。

 ※(貴志)

 お手紙をいただきまして、まず驚きました。10年も吹いているのに甲音が出せないというのは、私としては、考えられません。 おそらく独学でしょうか?
 師匠の吹き方を見ているだけで、3,4ヶ月、遅くとも1,2年で甲音は十分出るのが普通です。吹き込む息の速度を上げれば甲音になるというのは、かなり有効なアドバイスです。しかし、その方は、吹き込む息の速度を上げる方法が分からないのではないでしょうか。
 息の量ではなく、息の速度をあげることができないでいるので甲音が出ないのだと思います。 私は、実際にお会いしていませんので、その方の吹き方が分かりません。ですから、一般的な話としてお聞き下さい。

 息の速度を上げると甲音になるのは自明の理です。ですから、おそらく口元がゆるんでいるのではないでしょうか。唇の赤い部分に力を入れてはいけないのですが、口笛を吹くときぐらいの力は入れても大丈夫です。

 まず、口笛をしっかり吹いてください。その感覚で(口笛の形ではない!!!!!!)尺八をしっかり吹ききってください。 甲音が息の音にまじってかすかに出ると思います。そうすれば、そのかすかな甲音をしっかりしたものに練習して育てると良いと思います。
 仙台から私の住んでいる大阪はあまりに遠いので、、近くにしっかりした相談できる演奏家のところに行って見てはどうでしょうか。   きっと有効なアドバイスが得られると思います。

 しかし、考えてみますと、少し前ですが、北海道から飛行機で拙宅まで尺八相談にお見えになられたかたもいらっしゃいますし、先月は千葉から、そして先々月でしたか、北九州からお見えになられております。 宜しければ、遠いですがご相談にお見えになられても良いかと存じます。

○1月の尺八相談日は2007年1月7日(日)の講習会とおなじです。

 申し訳ございませんが、当日4名の定員に達しましたので申し込みは受け付けておりません。ご了承ください。

○ 「尺八吹奏法U」あります。

○ ご注文の節は、 ハガキに「 U( )部 希望」とお書きの上

 〒590-0531 泉南市岡田2-190 貴志清一 までご投函ください。
(送料は無料です。一冊1,000円)