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インターネット会報2007年4月号

京都、明暗寺を訪ねて
  
貴志清一

 3月17日、暑さ寒さも彼岸までと言いますが真冬を思わす冷たい北風の中、京都明暗寺を訪れました。(IT版では、写真は省略させていただいています)
明暗寺:尺八根本道場と書かれた山門を入ると苔の絨毯を敷きつめた緑の庭に椿の花が3,4輪散っていました。
連綿と続いてきた日本の美意識とはこういうものなのかと思わず考えさせられました。
尺八を吹く行為がこの情景をより美しいものにすることが自分にできるだろうか。日頃、ややもすればアンブシュア(吹く口の形)の練習に終始する自分自身への反省になりました。
また、古来、幽玄の美を尊重する尺八音楽はそんなに大きな音量はいらないということを再確認する良い機会にもなりました。
入り口は閉まっていたのですが、幸い住職さんがいらっしゃいましたのでお邪魔しまして有益なお話を聞かせていただきました。
とくに私がずっと考えていた「明暗寺の虚竹禅師像は三節切を吹禅する姿だから江戸初期にさかのぼる」ということが思い違いだということを教えていただきました。お話では、どう見てもこの像は江戸後期あたりのものらしいです。ただ、製作が江戸後期であるにも関わらず、その像は三節切を吹く姿にしていること自体、江戸時代の虚無僧は“尺八濫觴の頃は三節切であった”という認識を持っていたことになり、大変参考になりました。元禄あたりの初めての尺八手引書が「三節切初心書」であることを考え合わせますと、まことに感慨深いものがあります。

 また、お話では、尺八は呼吸が重要であるということです。私も普段からこのことを強調していますので、やはり同じ思いなのだなあと意を強くしました。音楽としての尺八を追求するにしても、その中に吹禅の気持ちを持つことが大切であると教えていただきました。
入り口を入ったところには「吹禅」と彫られた石があり余計に感慨深かったです。碑の左には彼岸桜でしょうか、桃色に美しく咲いています。 その美しい花と碑が並んでいることにより、一層生々流転を感じさせられます。

 献笛をと仰っていただいたので「鶴の巣ごもり」を吹かせていただきました。二百年は経っているであろう虚竹禅師の像を前にして、だれも聞いていない座敷で吹く尺八は「自らの演奏すらも注意深く聞かないで、吹き散らかしている」自分自身を苛む辛い演奏でした。思わず尺八への情熱すらも奪われてしまいそうな経験でした。
献笛録に名前を書かせていただき「尺八吹奏法U」をお渡しして丁重にお礼を申し上げて退出しました。
献笛時の心の動揺にも関わらず、その美しい庭は相変わらず春の日差しを受けて輝いていました。尺八への情熱を高めることにはなりませんでしたが、なにか心に深い影響を与えた明暗寺への訪問でした。


【お便り紹介@】(N氏より)「DVD版 尺八吹奏法U」について

 三寒四温に一喜一憂のこの頃です。
さて、先般、尺八吹奏法を映像・音声化したDVDをお送りいただきました。
百聞は一見に如かず、とはその通りで、冊子で教えていただいたことに今回のDVDを重ねると、K氏の言わんとすることがより分かりやすく伝わって参ります。しかも更に良いことには、尺八は楽器なので、先ほどの「百聞は一見に如かず」の法則が成り立ち、音響・音色によりK氏の意図が自らの耳で確認できるのです。
吹奏法は言葉で語ることができても、音の響きや音色というものは、言葉では語れないもののように思います。その意味で、今回K先生の尺八吹奏に関する考え方を映像でも示されたことは、私と同じように多くの方々に福音となったことと想像します。
と言いますのは、言葉で語られたことはその通りと思っていても、いざ自分がやってもうまくいかなければ、どうして良いのか分からなくなってしまいます。でも、映像があって、音があれば、そこで起きていることは自分でも起こせるはずだ、と何度でもチャレンジする力・勇気がわいてくると思うからです。

《貴志》
 お便りありがとうございます。
DVDの紹介文で「生活雑音が入り、素人の映像で見辛く、本曲は故山口五郎師のような華麗な演奏に比すべくもありません」とありましたのでほとんどの方は視聴していらっしゃらない中で、このような質の悪いDVDを我慢強く最後まで見ていただいたことに感謝いたします。
お手紙の中で「映像と音声があれば、そこで起こっていることは自分にも再現可能だ、少なくとも再現しようとする意欲がわいてくる」とおっしゃっていただき、少しでもこのDVDがお役に立ってることを嬉しく思いました。是非よい音色、自由自在なコントロールを目指してがんばっていったください。


【お便り紹介A(K氏より)】

尺八吹奏研究会の会報198号、「春の海の楽曲分析」はよかったです。これからもこういう内容を続けてほしいです。
さて、ご依頼ですが、会報に出ている五線譜の吹き方の講習をお願いいたします。

〈回答させていただきます、貴志〉
 秋、冬と講習会をしていますので、五線譜はたっぷり時間をとってそれだけの講習会を春〜初夏(2007年)に開催してもいいかなとは思っております。ただ、多忙な毎日ですので、あくまでも計画前の段階と言うことです。お申し出、ありがとうございました。講習会の案内は会報にてお知らせいたします。
さて、「尺八吹奏法U」では、音の出し方の合理的な考え方、そして細かい技法を解説いたしましたが、一つ残っているのが「合理的な運指の訓練法」だと思います。指を速く確実に動かすには、やはり合理的な練習方法を採らなくてはなりません。この点が「尺八吹奏法U」では全く触れておりません。今後の課題だと思っております。
この指の合理的な練習法は、レベルで言えば「春の海」の中間部をよどみなく流れるように吹く、または、宮田耕八朗氏の「雨の水前寺」の速い所をすいすい吹いていく段階の為のものです。
実は、私自身、高校時代からフルートを吹いておりましたので速い運指にはあまり困ったことがありませんでしたのでこの分野での解説もあまりしなかったのだと思います。
今後、会員様からのたくさんの希望があれば「合理的な運指の訓練法」の解説書とDVDを作成してもいいかなとは思っております。ご意見をお待ちしております。


【お便り紹介B】(H氏より)

 目下琴古流本曲を練習中です。しかしながら二段メリ等が難しく苦労しています。特に「ムラ息」の吹き方、「カムリ」とかが大変です。会報にこれらの技法の吹き方の解説記事を掲載していただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。

○回答させていただきます。

 二段メリはツメリよりさらに顎を引いて(歌口の開口面積を狭めて)戻す技法です。ちょうどこれは「DVD版 尺八吹奏法U」のメリ音の練習法の箇所で実演しております。参考にしていただければ幸いです。
また、ムラ息も同じDVDに実演を交えて解説しております。
ただ、「カムリ」は琴古流には無い手です。技術的には押し指の直後に顎をしゃくるやり方です。わたくしも習ってできることはできるのですが、これは横山勝也師の本曲解説VHSを見るのが一番確実だと思います。


[お知らせ]
参考として「DVD版 尺八吹奏法U」をご希望される方は、往復ハガキにて申込要項をご請求ください。
往復ハガキ往信面に「DVD版尺八吹奏法U・申込要項希望」
返信面に住所、ご氏名を記入の上、〒590ー0531 大阪府泉南市岡田2ー190 貴志清一宛までご投函下さい。折り返し申込要項をお送りいたします。
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○「尺八吹奏法U」ご注文の節は、 ハガキに「 U( )部 希望」とお書きの上 〒590-0531泉南市岡田2-190貴志清一まで、 (送料は無料です。一冊1,000円)