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インターネット会報2007年11月号
「吹き方は急には変えないように」 貴志清一

「尺八吹奏法U」をご購入された方から
○尺八歴が10年、20年
○唇を横真一文字にする奏法を続けてきた
○長年身に付いた奏法を変えるのは難しいが、「尺八吹奏法U」の
・唇を横に引っ張らず
・口腔前庭を意識する奏法に挑戦したい

 上記のようなお便りを何人もの(もしくは何十人もの)方から頂戴いたしました。
 合理的な奏法が普及するのは大変良いことだと思いますが、ややもすると文面から、何か思い詰めていて鬼気迫るものを感じることもあります。

 さて、奏法は総合的なもので、一時に大幅に変えるとかえってスランプに陥ることがあります。適切な指導の下で、徐々に吹き方を変えていくのは良いことなのですが、その指導がない場合は気を付けなければなりません。

 例えば私が口腔前庭を教える場合、それを「育てる」という言い方で説明します。上唇の裏に小さな空気の部屋を作るのですが、できなければ「口腔前庭というものがあるのだなあ」という意識を持つだけで十分だと教えます。何ヶ月、何年一緒に吹いていますと、その方は「これかな?」と言うような空気のたまった感じが得られることがあります。そのとき、実際に音が良くなっているので私も「その感じです」と申します。ただそれを闇雲に大きくするのは良くないと教えます。

 実際問題としても口腔前庭はさほど大きくはありません。上唇裏に小さな空気の塊を中心として広がる感じです。

 その「口腔前庭の感じ」をつかんだ方には、それを大事に育てるように指導します。そして、口腔前庭を作るのが目的ではなく、それを使って朗々とした音を自由自在に出すことが目的であるということも付け加えます。

 本会会員でもあるM氏はそのようにして、現在は十分鳴った音を割合自由に出せるようになりました。
 ですから、焦ってはいけないのです。

 今までの横一文字の口でも、それなりの音が出ているのでしたらそれはその範囲で合理的な奏法になっているのです。それを180度転換して全く新しい口の形にしてもスランプに陥るだけです。

 横真一文字の吹き方であってもその吹き方のままで、ほんの少し「あまり引っ張らない意識」を持ちながら練習すればいいのです。口腔前庭ができていなければ(以外と本人は意識しませんが上手な人は自然とできているものです)「口腔前庭というものがあるんだなあ」と思いながら吹くだけで良いのです。何ヶ月、何年かすると「あっ、そうか」と思えるときが来ると思います。その時に口腔前庭を次第に育てれば良いのです。

 「急いては事をし損ずる」のことわざ通りです。
 ゆっくり練習していってほしいと思います。


「お便り紹介」

(A氏より)
 練習法について
  私と同時期に始めた仲間達(満3年経過)ですが、今もって甲の音が出せないでいます。師匠は「口を一文字にして強く吹けば出る」と言いますが、私は違う方法で甲の音が出せるようになりました。
 多分、K氏の「尺八吹奏法U」にある口腔前庭ができていたのかも知れません。
 友人達にも説明して、とにかくすべての音の長音(10拍以上)を吹くようにと練習しています。但し、甲音になると5〜6拍しか続きません。このような練習でよいものかどうか不安です。

(貴志)
口を一文字にして強く吹く”非合理的な吹き方が西暦2007年の現在でも存在しているのですか!そういう吹き方は遠い昔になくなったと思っていたのですが、まだありますね。
 それでも、今回の論説のように焦らず、徐々に合理的な吹き方に移行していってください。


(匿名)
 質問ですが、私は頬をしめて(えくぼが出来るように)吹いていますが小林一城氏にしろ貴志氏にしろ、頬をふくらませて吹いておられるように見受けられます。どちらがよいのでしょうか?確かに、頬をふくらませて吹くと、ボリュームのある音が出るように思いますが。

[回答]

 私に関しては、頬をふくらませて吹いている意識は全くありません。腹の底からのしっかりした息を良い流れで尺八の歌口に持っていく意識をしていると自然と頬が少しふくらむようです。結果としてそうなっていることですので、ふくらませない状態というのがわかりません。したがいましてどちらがよいかと言うことは残念ながら言えません。
 ただ、頬を余りにもふくらませるような圧力のかけ方は、おそらく耳にあまり良くないと思います。ですから過度に頬をふくらませるのはやめた用がよいと考えております。参考にしてください。


(匿名)
 会報219号のロングトーンの記事は良かったです。私もロングトーンの重要性を感じています。私なりのロングトーンを練習に取り入れていますが、その効果を実感しています。この記事によりロングトーンの重要性を再確認しました。
 さて、尺八の性能・良し悪しについてです。
 俗に言う中級品の尺八は上級者には物足りないという感覚は理解できる気がします。しかし、上級管(高級管?)は初心者・中級者でも実感しカバーできるのだろうか?上級管は上級者でなければその楽器としての良さを実感できないのか?上級管はどの上級者、中級者、初心者でもそれなりの鳴りを得られるのか?等々。尺八購入に当たり疑問を感じています

[お返事]
 楽器が主か、奏者の技量が主か?この種の問題は永遠に解決は見ないと思います。
 そこで、私の私見ということで以下、参考にしてください。
 まず、経験から言えることは、尺八には高級管・中級管・初級管がそれぞれ連続的ではありますが存在するということです。
 僭越ですが、もし私が上級者で上級管を使用していると仮定しますと・おそらく音を出すのに必死な初心者は上級管を十分実感できないのではないかと思います。
・おなじく、初心者は上級管を使っても、それなりの鳴りは得られないと思います。
・ただ難しいのは、竹を手にした時に軽々とびゅうびゅう鳴っても、数週間、数ヶ月経つと吹きにくくなり、また音色も悪く鳴るという尺八も存在します。
逆に、最初は何か奏者を拒否するようなところがある竹でも、しっかり吹き込んでいくにつれ深い味わいのある音色が得られ、しかも音のコントロールも十分できてくる竹もあるということです。
 そうこう考えますと、竹選びは博打のようなもので、性の悪い竹にあたったらまあ、尺八人生は若干苦しいものになるという感じです。
 私の確実な回答としましては「あまり、よく分からない」ということになるでしょうか。
 しかし、言えることは、「自分の技量が上がってくると自ずと竹を見分ける力が付いてくる」ということです。見分ける力がついてくれば竹選びにさいして、大きく見誤ることはなくなります。
 お互いに尺八の技術向上を目指したいものです。

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○「尺八吹奏法U」ご注文の節は、 
@邦楽ジャーナル通販 商品コード5241、http://www.hogaku.com/ または
Aハガキに「 U( )部 希望」とお書きの上 〒590-0531泉南市岡田2-190貴志清一まで、 (送料は無料、一冊1,000円)
○「DVD版 尺八吹奏法U」難点が多々ありますが残部あります。もし参考としてご希望される方は、往復ハガキ往信面に「DVD版尺八吹奏法U・申込要項希望」返信面に住所、ご氏名を記入の上、上記までご投函下さい。
折り返し申込要項をお送りいたします。