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会報2008年5月号

(質問特集)

 一千万円の尺八は一千万円の音がする?


[ご質問]
 一千万円以上もする尺八があるようですが、金額に見合う音が出るものなのか知りたいです。

【返信】
 私もそのような尺八があるということは聞いたことがあります。しかし実物を見たり吹いたりしたことはありません。私の吹料の20倍でしょうか。もし私がそれを吹いたとしますと、単純に考えて20倍の良い音色が出るのでしょうか。そんなことはあり得ないと断言できます。もしかすると私の竹よりもほんの少しいい音がするかも知れませんが、まあ、実際は自分の竹ぐらいか、それ以下の音でしかないでしょう。
 なぜかというと、素晴らしい音色を出せる、例えば故山口五郎師のようなアンブシュアを私はまだ獲得できていないからです。30年間尺八を吹いてきた経験から言えることは、「尺八の音色は奏者による」ということです。従いまして、上記の質問が「超高額な尺八を吹けば超素晴らしい音色が出るのですか」という意味でしたら、こたえは「いいえ」です。すなわち、「一千万円の竹は金額に見合う音色なんかでるはずがない」というのが私の答えです。
 竹にお金を出してもいい音色が手に入る訳ではないので、悩みながらでも練習をしていくのでしょう。竹道に王道なし、だと思います。

(M氏より)
 貴志氏の尺八は管尻の径が大変大きく見えますが、良い音色が出るのでしょうか。

【返信】
 お答えいたします。管尻の径を大きくした唯一の理由はピッチ(音程)を上げるためです。冬場でも他の楽器と合奏することもありますので頭部管を入れたり出したりできるフルートのような構造でない尺八ではそうするより他はなかったのです。音色には関係有りません。いわゆる開口端による音程の上昇が理由です。ですから、そうしたからといって良い音色がでるわけではありません。
 良い音を出すためには、やはり練習しかないと思います。

(M氏より)
「私の弟子で、上唇がずっとふるえて、音もふるえる人がいて指導に困っています。どうすればいいのでしょうか。」

【返信】
 上唇がふるえる原因は、実際のその人の演奏を見てみないとわかりかねますので、一般的なことを申し上げます。
 上唇がふるえるということは、どこかに余計な力が入っているのではないでしょうか。その余計な力をとれば、ふるえなくなります。
 そうはいっても、なかなかむつかしいですね。ただ、これは喉が尺八を吹くときに鳴ってしまう悪い癖と同じで、上唇がふるえているのそのまま吹き続けますと、「上唇がふるえる練習」になってしまいます。
 ですから第一段階としては
・上唇がふるえだすと、吹くのをやめて、もう一度吹き直す。
 万一、発音と同時に震え出すのであれば、出だしの一瞬の震えない音でやめる。
・その震えない音を1秒、2秒、・・・5秒と出していく。
・最終的に震えない音を獲得して自由自在に吹いていく。
 この時、上唇裏の口腔前庭がほんの少しあればきわめて小さい息の圧力でも音が出ます。この方面から改革していってもいいですね。
 しかし最終的には、本人に上唇のふるえを直そうとする「強い意志」があるかどうかによります。
 厳しい言い方かも知れませんが、「上唇ふるえは悪い癖である」という強い自覚と「直そうとする強い意志」がなければ周りでどんなに的確に指導しても直りません。その時は、本人も指導者も諦めましょう。
 震えながらでも音を出す最低限の喜びというものはあるのですから、それに満足しましょう。
 強い意志があり、どうしても直したいという気持ちを持って、しかも「きわめて小さな軽い息でも音が出る」のを確かめたいときは隣接県ですので一度お越しくださるようにお伝えください。実演で示させていただきます。

(T氏より)
 歌口の径は尺八の長短(一尺八寸、六寸等)に関係なく同じ径のものが音が出しやすいように思いますがいかがなものでしょうか。将来長短10本くらい揃えたいと思っています。

【返信】
 さて、尺八の歌口のことですが、仰るとおり歌口の径は尺八の長短にかかわりなく同じ径のものが吹きやすいです。わたくしも何度も何度もこの問題にぶつかりそのたびに製管師(小林一城氏)のお宅に行って問題点を申し上げ部分修正をしていただきました。今使っている一尺六寸管はあらかじめ一尺八寸管をお預けしてほとんど同じ径になるようにしていただきました。
 それほど尺八は微妙です。
 ただ、そのときなんと深さが違ったので同じ径でも吹き方に違和感を覚えしかも音色の難があったので、またまた氏のお宅に行って説明し改作(!)してもらったのでした。
 この尺八に関する苦労話には事欠きません。ですから、これから長短の尺八をそろえようとなさっていらっしゃいますので、歌口の径は同じなのは当然ですが、
・歌口の深さ、歌口の肉厚、歌口の土手の平たさもしくは丸さ、そして目には見えませんが尺八自体の内径も揃えるのが理想です。
 そうしますと、同じ製管師でしかも重々説明して作っていただくしかありません。
 この点、ご考慮にいれられれば、必ず長短の尺八をスムーズに吹き分けられることと存じます。

 尺八は、吹き方で苦労しているときが、もしかして一番面白い時かと思います。しっかりご練習ください。
 ご来阪の折りはお寄りください。

【資料紹介】

 江戸時代の虚無僧について知識のある方には良く知られた資料ですが、参考に紹介いたします。
 安藤広重の「東海道五十三次」中「保土ヶ谷」に旅をする虚無僧が描かれています。江戸後期ですから、深編み笠ではなく「天蓋」を被っています。
(以下、IT会報では省略させていただきます)

[お知らせ]

○「尺八吹奏法U」ご注文の節は、
@邦楽ジャーナル通販 商品コード5241、http://www.hogaku.com/ (一冊1,000円)

○「DVD版 尺八吹奏法U」難点が多々ありますが残部あります。もし参考としてご希望される方は、往復ハガキ往信面に「DVD版尺八吹奏法U・申込要項希望」返信面に住所、ご氏名を記入の上、〒590-0531大阪府泉南市岡田2-190 尺八吹奏研究会までご投函下さい。
折り返し申込要項をお送りいたします。