会報 No.17

論説 チューナーの見方と正律管について 貴志清一


(佐藤 誠 氏より)  この間SEIKO社のAUTO-TUNER ST1000という物を買いました。1・8尺と1・6尺管は大体ロ、ツ、レ、チ、ハの音が針でいえば真ん中にきて音程が正しいのですが、とあるところの1・5尺はレの音だけが針が+30ぐらいにはね上がります。これは尺八の調律が悪いということでしょうか?

 また2尺管のロ音の一は、尺八用の調子笛「楓」では、C+25の位置になります。これを基準にするのですから、ツ、レ、チ、ハ等もみんな+25の位置に針がこなくてはならないのでしょうか。

 同様に、2・1尺管のロの位置はB+40

     2・2尺管のロの位置はB -25

また1・5尺、2尺、2・1尺、2・2尺、2・3尺(すべて中級管)ですが、針がすごく各音上下が激しく定まりません。これは吹き手の能力の問題もさることながら、尺八自体に問題があるようにも思えますが、いかがなものでしょうか? 以上の点、詳しくお教え願います。

上記のような内容のお便りを頂きました。

同じようなことで悩んでいる方も多いと思いますので、やや詳しく説明させて後学の助けとしたいと存じます。 はじめにご質問の問に直接回答を致します。

(問)1・5尺はレの音だけが針が+30ぐらいにはね上がります。これは尺八の調律が悪いということでしょうか?

(答)そうです。尺八の調律が悪いのです。

(問)2尺管のロ音の一は、尺八用の調子笛「楓」では、C+25の位置になります。これを基準にするのですから、ツ、レ、チ、ハ等もみんな+25の位置に針がこなくてはならないのでしょうか。

(答)そうです。もし基本音がC+25なら、ツ、レ、チ、ハも全て+25にならねばなりません。 ・ただし、民謡なら問題ないのですが、他の普通のチューニングの楽器と合わせる時には音が高すぎて合奏できません。

(問)また1・5尺、2尺、2・1尺、2・2尺、2・3尺(すべて中級管)ですが、針がすごく各音上下が激しく定まりません。尺八自体に問題があるようにも思えますが、いかがなものでしょうか?

(答)実際に吹いてみなければ分かりませんが、おそらく尺八自体に問題があるのだと思います。そういう尺八を吹くときはもう耳を研ぎ済まして音を作る必要があります。

以上のように回答を与えましたが、ここで理論的なことを述べます。その理論は分かったとしても直接尺八の上達には関係ありませんから理解できない方はご安心下さい。ただ、こういう基礎理論は、どこかに書いていると言うことが大切ですので以下、説明いたします。

セントとは?

 まず、チューナーの +-(プラス・マイナス)はどういう意味なのでしょう。

ある基本の音を+-0(ゼロ)として、上記のチューナーですと、基本より高ければ+の方に針がふれます。低ければ-(マイナス)の方に針がふれます。しかもどれくらい高いかというのを目盛りで示しています。一番高いのが+50、一番低いのがー50と言う表示です。

これはある音から半音高いことを+100(セント)と決めてあるのです。半音低ければ-(マイナス)100セントです。ですから、

 C+50 →C(ド)の音だけれど、50セント(半音の半分)高いですよ。
 C+25 →C(ド)の音だけれど、25セント(半音の4分の1)高いですよ
 Cー10 →C(ド)の音だけれど、10セント(半音の10分の1)低いですよ。

と言う意味です。
このセントの表し方の定義を示します。

  セント=1200logの2剰*(V2/V1)

    ※V2:比べる振動数  V1:元の振動数

現在 A(尺八の一尺八寸管で乙のチ)=振動数440Hzとします。
振動数440Hz=1秒管に疎密波を440回繰り返すということになります。
そして、今使われているチューナーは平均律を元にしています。ですから
A=440Hzと考えますと、そのオクターヴ上の音は880Hzの振動数です。
そのオクターヴを12半音(律)に分けているのですから、半音上のB♭(リメリ、ハメリ)は振動数 440*√2の12剰となります。こういう風にしてチューナーは出来ています。

正律管でない尺八について

さて、・・・尺八用の調子笛「楓」では、C+25の位置になります。と言うことですが、この尺八を民謡以外のギターなどのの楽器と合わすときには、C+25では困るのです。半音の4分の1も音が高ければ聞くに耐えない音になります。

 これは1寸ごとの長さを基準にして、一尺9寸で基本音をC♯・2尺でCとしたから混乱するのです。音の高さは等分した管長には比例しません。半音で言えば、12√の何剰かで高くなっていくのです。

計算によると

・基本音をC(ド)にとる場合、正律管(正しい音のでる管)を使えばいいのですが、もし長さ二尺の尺八を使えば少し短いので+18セント音が高くなってしまいます。

 これが質問にあった「また2尺管のロ音の一は、尺八用の調子笛「楓」では、C+25の位置になります。」の理由なのです。

・そして、一尺八寸より完全四度低い長管の竹は二尺三寸では全くダメで、丁度二尺四寸の長さが丁度言いことが分かります。(498セント下で、ほとんど500セント(四度)低くなる。)

以上のような説明でお分かり頂けたでしょうか。

民謡をなさっている方は、「何本」とか言って歌を歌う人に合わしますが、それは、尺八の1寸刻みの長さを元にしているのです。ですからそれはそれでいいのですが、いざギターや何かと合奏しますと、もう混乱してきますし、正律管を持っていないのですから合わしようもありません。

 この点をわきまえてから演奏して下さいますようお願いいたします。

 ここでは余り述べませんでしたが、チューナーは平均律を元にしていますから、当然、あくまで目安です。 音階の全ての音をこのチューナーと一緒に合わすことは、かえって音楽をダメにしてしまいます。

 恐いことですが、演奏会の楽屋で先にお琴の人が音を合わせているとき、よくみますと、全ての糸をチューナーで合わしている師匠を見かけます。わたしに言わせれば「この人、何考えてんやろ。」となります。  古曲を弾くなら当然半音になるところは平均律より低めにとるべきです。(奏者によって違いはありますが)

 そして、完全5度・それの転回として完全4度は耳で聞いてうなりの無い音でチューニングすべきです。  こんな当たり前のことが行われていないのは大変なことだと思います。 この話しは別の機会に述べたいと思いますが、チューナー万能では決してないことを覚えて置いて下さい。


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