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インターネット会報2009年12月号
「尺八理想の横ユリ・息付きビブラート」の理論・実践(その1)

○はじめに
 2006年に「尺八吹奏法U」を著し3年が経ちました。その間、各方面よりいろいろな貴重なご意見をいただきました。この本の中でいまひとつよく分からないのがp40の「横ユリビブラート」であるとのご指摘が多くありました。
 少ない分量の冊子でこの問題を扱うのは不可能に近いので、本文にもありますように、
「おおまかな練習法(言葉では伝わらないかも知れませんが)」として細かい説明や詳しい練習法は省略させていただいたのでした。そして、この簡単な説明でも理想的なユリ(ビブラート)で演奏できる尺八奏者がたくさん輩出されるだろうという淡い期待を持っていました。
 しかし、現実はそうはいきませんでした。まず私のところにお稽古にきている熱心な方に横ユリを指導しはじめたのですが、「この本の書き方では、どうもよく分からないのですが」とおっしゃられました。
 この言葉はわたくしにとっては自己反省を迫られる重みのある言葉でした。よくよく考えてみれば、尺八吹奏法Uを書いたときに「どうせ言葉では、この横ユリは説明できない」という考えがありました。それもあって、勢いこの難しい問題をたった2ページしかとりあげなかったのです。
 言葉・文字であっても、最大限尺八吹奏について伝えようとして「尺八吹奏法U」を書いたのに、その本文中に「説明できないのではないか」という気持ちで書いた文章が2ページもあるというのはやはり私の反省すべきことです。
 今回は、その反省をふまえて、より詳しくこの「ユリ(ビブラート)」を取り上げて、志のある尺八愛好家の技術向上に資したいと思います。
 会報では、おそらく4,5回のシリーズになると思います。
 まず、全体の流れを目次として示します。

○本文の構成(目次)
1.理想的なビブラートは横ユリ・息付きビブラートである
そして、それは毎日の適切な練習によって必ず、獲得できるものである

2. 息のビブラートは、横隔膜ビブラートではなく、声門下腔のビブラートである。それはフルートの名手のビブラートであり、その獲得はかなり難しい

3.尺八は独自の首振りによる横ユリのビブラートを持っている
  そして、この尺八独特の首の横ユリに息のビブラートを載せることにより容易に、きわめてなめらかなビブラートが獲得できるということ。これを高い音楽性と共に達成できたのは、私の知る範囲では、最盛期の故山口五郎師であること。

4.尺八において、息をエッジに理想的なポイントに当てるのは至難の業であるが、横ユリは左右方向の、そして息のビブラートは前後方向の理想的な息のポイント探しを容易にしてくれる。

5-1.声門下腔による息のビブラートの練習法
5-2 首振りによる横ユリビブラートの練習法
5ー3 息のビブラートと横ユリビブラートの種々の結合
5-4 良い指導者のもとで練習する息の横ユリの1:1の重ね

以上
1-1.理想的なビブラートは横ユリ・息付きビブラートである
そして、それは毎日の適切な練習によって必ず、獲得できるものである
 「尺八吹奏法U」にも書きましたとおり、理想的なビブラートはある少数の奏者だけの専有物ではありません。自分自身の経験から、「ビブラートは適切なアドバイスと継続的な練習によってすべての向上心のある人に与えられるものである」と言えます。
 言葉というのはたいへんこわいものですね。イタリア人ならほとんど例外なくできる(R)の発音と同じ舌の動きである「玉音」を、ある名人が「この玉音(たばね?)は2000人に一人しかできない」と言ったとか言わないとか。この話を真に受けて、多数の人が「玉音は、わたしには無理なんだ・・・」と練習もしないうちからあきらめてしまったという実例があります。
 尺八吹奏法Uでも書きましたとおり、時間はかかっても私の言う「うがいによる玉音の練習」を続けていれば、ほとんどすべての人が獲得できる技術なのです。流言・デマ・まことしやかな話の類が本当に怖いといういい実例だと思います。

 実は、この横ユリ(ビブラート)もそれに近いものです。
 「首振りによる横ユリ(ビブラート)はどう練習したら修得できますか」という質問を著名な尺八演奏家にしたとします。もし返ってきた答えが
「横ユリは、自然にできるものです。」だったら、この弟子はおそらく途方に暮れるでしょう。答えになっていないからです。そして、もしかするとその弟子は横ユリビブラートの獲得をあきらめるかも知れません。心の中で「おれは才能がないのだ。」と思いながら。
 しかし、まだこの種の質問ができる弟子はましです。一人以上弟子が習いにきている師匠のうち何人が、流れるような、なめらかな、そして速さも自由自在の横ユリビブラートをかけることができるでしょうか。
 もしかすると、日本中見渡しても、その数はさほど多くはないと思います。

 同じことはフルートにも言えますが、フルートは次に述べます声門下腔を使ったビブラートですので、ちょうど歌にビブラートをつけるときと同じです。これは声門下腔を自在に操らなければなりませんので難しいのです。速くビブラートをつけようとすれば圧力調整がきかなくなり、とがったビブラートになりがちです。
 現代のフルーティストですと、J.ゴールウエイがこの声門下腔ビブラートの実によい見本です。
 フルートではかなり難しい息による声門下腔ビブラートでも、尺八には横ユリというものがあります。横ユリは首振りでおこないます。そしてその首を振る動作はちょうど、水をかぶった犬が首をうまく使って体についた水をブルブルはじき飛ばす動作と同じです。
これはかなり速くできますね。尺八の横ユリは、原理だけ言えばこの犬の動作と同じにすればいいのです。当然ですが、人間の場合、からだ自体はあまりふるえませんが。
 さて、この横ユリに、息の拍動の声門下腔ビブラートを忍ばせるのです。それによってユリ(ビブラート)はますます磨きがかかり、音色も磨かれてくるのです。何よりも、息の拍動で支えていますから小さい音から力強い音まで自由自在に表現できます。

 尺八吹奏法Uではその一例として横ユリ2回に息の拍動1回の例を示しました。
 この尺八吹奏法Uのユリの練習を毎日練習して1年〜3年もすれば、自然といろいろなビブラートができるようになると思っていましたが、それを修得したというお話はほとんど聞きませんでした。
 横ユリ2回に息の拍動を1回という練習をしていれば、自然と横ユリ1回に息の拍動も1回、それはそれはなめらかで、この世にないような音になると気づくようになると思ったのです。
 そしてある時には甲乙とも拍動なしの横ユリのみで吹き、ある時は高音域での速い横ユリ2回に激しい息の拍動1回で故二代目酒井竹保師のような戦慄が走るような演奏をする、等々。
 本当に尺八はこのビブラートに関しては世界中の笛の仲間の中でも卓越した能力を持っているのです。
 
まとめてみますと、理想的なビブラートは横ユリ・息付きビブラートであり、それは毎日の適切な練習によって必ず、獲得できるものといえます。
 次は、いわゆる息のビブラートについて詳しく述べます。

(次号につづく)






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〒590-0531泉南市岡田2-190-7貴志清一 宛



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(尺八歴31年、「尺八吹奏法U」著)
(池田静山師、後ち松村蓬盟師に師事)
○内容 琴古流本曲 新、現代曲、古曲、歌曲、初歩指導等
(琴古譜、都山譜両方可能、五線譜も可能)
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 月1回四千円、2回六千円、3回八千円
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〒590-0531 大阪府泉南市岡田2-190
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