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インターネット会報2010年4月号
続き:「尺八理想の横ユリ・息付きビブラート」の・実践(その5)

 さて、この「尺八奏者のビブラート」連載も5回目を迎えました。
 過日、私自身の小さい演奏会の後、「尺八のビブラート」と題しました講習会を持ちました。参加していただいたのは2名でしたが私にとってはたいへん良い勉強になりました。
 その一つは、改めて「ビブラートは難しい」ということです。なかなか2時間くらいでは修得できないということがわかりました。ただ、ご参加のお二人には、正にビブラートをかけている私の演奏を耳と目で実感していただけましたので、よりよくビブラートを理解されたと思っています。 その上、尺八本曲演奏も至近距離でお聴きくださいましたので、いわゆる“息のビブラート”と“首の横ユリビブラート”が打ち消し合うビブラートというのは、そう頻繁に出てこないこともおわかりいただけたかと思います。
 一般の方はインターネット上、会員さんは会報をよんで「さあ、尺八はビブラートだ!」とばかり、全ての音に過剰なビブラートをかけまくる・・・・そういう危険性もなきにしもあらずです。
 そういう危険性を含んだ記事が今連載中の「尺八奏者のビブラート」なのです。
 ですから、今一度心に銘じておいて頂きたいのは、
「尺八本曲や地歌、〈春の海〉に代表される新曲、そして歌謡曲、民謡、それらは決してビブラートの練習曲ではない」ということです。
 ある意図の下に作曲されたものを技術的な練習のために流用するのは本末転倒です。作曲者、伝承者の音楽的な内容が最優先されるべきで、曲を出汁にしてビブラートの練習を行うのは決して良いことではありません。
 
 では、今回から実際の練習に入ります。
 練習するにあたって、必ず修得していなければならないことから始めます。それは腹式呼吸による「息の支え」です。

ビブラートを練習するための絶対必要な基礎としての
「息の支え」

 ビブラートは、息の「支え」を体得して初めて、練習すべきです。
この支えがあれば、真っ直ぐな揺れのない音を伸ばすことができます。揺れのない真っ直ぐな音にビブラートをつけていくのです。ですから、腹式呼吸による「息の支え」がビブラートには絶対必要なのです。
(腹式呼吸については『尺八吹奏法U』を参照してください。)
 息の支えは息を (鼻から)深く吸い、口を閉じると、お腹は押されて前にでる。ここで押される力に対抗して腹筋に力を入れる
これで、下向きの胸の中の圧力と、
上向きのお腹の中の圧力が釣り合う。
 図を見てください。(IT会報では略)
 
 この“釣り合って息を支えている”感覚がたいへん重要なのです。これを「息の支え」と言います。

 さて、この状態でお尻の筋肉をゆるめると圧力が下方へ働き(排便がおこる)ます。しかし、もちろん尺八奏者は演奏中、排便はしてはいけない。
従って、唇に少し隙間をあけて、また声門を理想的な隙間にして少しずつ息が出るように腹圧をかけるのです。これが、息の「支え」のある「腹式呼吸」なのです
 この呼吸法は、長い期間の教育と練習が要ります。決して、短期間では修得できません。しかし、正しい練習を積み重ねれば、だれでも修得できるものです。

 ここで腹圧を小刻みにかければ、いわゆる「腹式のビブラート」になります。これは、特殊な大きな波のビブラートが要るときに使いますが、通常は使いません。
 この“息の支え”のある腹式呼吸ができれば音を一定に、揺れなしで、吹くことができます。このまっすぐな音が、ビブラートの基礎なのです。
 くどいようですが、正しい腹式呼吸や「息の支え」なしでは、ビブラートの修得は絶対不可能です。
 ここまで、読んでこられた方で、まだ息の支えの腹式呼吸ができていない方は、ビブラートの練習はしないで、次号の練習法は知識として知っているだけにしてください。

 次回の「尺八奏者のビブラート」(その6)では、具体的な練習方法を述べたいと思います。(以上)



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〒590-0531 大阪府泉南市岡田2-190 貴志清一