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インターネット会報2010年7月号
竹尾氏の反論への回答
息ビブラート練習の危険性は予測できなかったこと。また、
横ユリと息の打ち消すビブラートは“一つの方法”にしろ、
極めて効果的な技法であること
                    貴志清一

 まずは、尺八奏者のビブラートに関して貴重なお便りをいただきましたこと、厚く御礼申し上げます。
 お送りくださいました内容の次の二点につきまして回答させていただきます。
@なぜ息ビブラート練習の危険性を述べないのか?
A横ユリと息拍動のうち消すビブラートは理想ではなく、 “一つの方法”と書くべきだ
  
 まず@です。貴氏のお弟子さんが顎を上下に演歌歌手のように動かし、それによって唇の弾力がなくなりスランプに陥ったとのことですが、まずは私の予測外のことで不可抗力的なものです。
 ただし、ご指摘頂きましたことで、全国の尺八愛好家が「息の拍動のビブラートは演歌歌手のように顎をワンワン動かしてはいけないのだ。」ということを肝に銘じていただけたことは大変ありがたく存じます。この点、大変感謝しております。
 8月には出したいと思っていますビブラートの本にはご指摘の通り「息ビブラートの練習は顎を上下させる動きの危険性」を明記したいと思います。
 次にAです。
 確かに、横ユリと息拍動のうち消す滑らかなビブラートは一つの演奏スタイルであり、流派によっては使わないかも知れません。使わない流派にとっては“理想”でもなんでもないことは自明です。ですから、ご指摘の通りあまり“理想”という言葉を安売りするのは考えものですね。
 従いまして、ビブラートに関する最終回になってしまう会報8月号のタイトル、そして出版予定の冊子の題名も変えたいと思います。
 すなわち、「尺八理想の横ユリ・息付きビブラートの理論・実践」
ではなく、「尺八奏者のビブラート」とより一般的な題名にしたいと思います。
 しかし、それでも
「横ユリと息の打ち消すビブラートは“一つの方法”にしろ、極めて効果的な技法であること」には変わりません。
 この技法が全く無用の長物であるかのように誤解している尺八愛好家もいるかもしれません。
 お便りのなかで「貴志氏自身があまりこのうち消すビブラートを使わなかった」のを実際の演奏会で聴いた、とありますからなかなか説得力のあるご意見だと感じられた方も多いでしょう。
 しかし、それはたまたま私の演奏を聴いた時の曲が「うち消すビブラート」を多用しないものであったと思います。たとえば「三谷菅垣」など。
しかし「真虚霊」はお聴きくださったことがあるでしょうか?二四五のハを激しく乙甲乙甲と繰り返して吹き破っていくところなどは、この横ユリ+息ユリでなければ力強さが出せません。
 私だけの感覚かもしれませんが、乙ロから甲ロまでの音はフワーと真っ直ぐな音で響きを広げていけます。また、甲のレやチではその広がった音にユリをかけることでより音楽的な表現の幅が得られるのです。
 ですから、この横ユリと息拍動のうち消すビブラートが音楽表現上たいへん有効なのです。
 ビブラートを必要なところで使用する私ですが、毎日の練習では常にビブラートをかけて吹いているとお思いの方も多いでしょう。実は違うのです。むしろビブラートのない真っ直ぐな音でのロングトーンの練習を重視しているのです。
 30年間、ビブラートなしのロングトーンを真面目に練習してこなかったと言う痛烈な自己反省を今年の5月に経験しました。それ以来、毎日30分以上はひたすらロングトーンで音づくりをしています。音の鳴るポイント見つけの為に一瞬横ユリもいれますが、あとはボーーーーーーーーと音を響かせます。
 そうなのです。尺八に限らず、吹奏楽器はノン・ビブラートのロングトーンが極めて大切なのです。楽器は音色が最優先されます。
 「本当の音を求めるのなら、ノン・ビブラートのロングトーンを毎日しなければいけない」と今年の5月に教えてくれたのは 故二代目河野玉水師だったのかもしれません。師は惜しくも一昨年に他界されましたが、最後の遺作とも言うべき素晴らしいゴロ節有りの地なし延べ竹が私に、“ロングトーンの練習を要求した”としか考えられません。
 へろへろの屁っぴり腰のような常にビブラートのかかった吹き方では、この地なし管は“鳴らない”のでしょう。ビブラートを常に入れてへろへろ音を延ばすことがロングトーンだと、この30年間勘違いしていました。
 何のきっかけかは分かりませんが、急に思い直してこの5月よりノン・ビブラートの練習を全ての音で毎日吹いています。
 尺八を教える立場の私が、まだ正しいロングトーンの練習を始めて2ヶ月というのはかなりのショックなことでした。しかし、過去は嘆いても仕方ありません。滅多に巡り会わないような地なし管を吹かせていただいている自分を考えるとき、これからも本当の尺八の音を求めてロングトーンの練習を続けていきたいと思う今日この頃です。
 回答が、結局は自分の考えの羅列になってしまいましたが、本文をお読みいただき、また何かありましたらご教示ください。
 ペンネーム竹尾氏に心から御礼を申し上げて回答とさせていただきます。

○会報8月号は、「尺八奏者のビブラート」の最終回です。
 会員のみなさまには、248号からの会報を綴じればそれが冊子になるとお知らせしましたが、内容等、少し変わりますのでその点ご了承ください。



【ご案内申し上げます。】

 尺八吹奏研究会第25回

│納涼 尺八演奏の夕べ │
出演 尺八:貴志清一、門下生 ギター:大脇健五
日時 :2010年8月7日(土)午後6:30開場 7:00開演
場所: 泉佐野ふるさと町屋館(市文化財)  
  南海本線泉佐野駅より徒歩5分
┌───────────────────────┐
│尺八古典本曲の調べ           
│尺八独奏・・「山谷菅垣」「(秘曲)鹿の遠音」他     
│  尺八:貴志清一、門下生         
│              
│尺八・ギター、50年前の流行り歌等        
│尺八・ギター・・・ 「アカシアの雨がやむとき」    
│       「シクラメンの香り」他          
└───────────────────────┘
○入場無料(要:整理券)

○申し込み法
往復ハガキに「8/7尺八の夕べ希望」と明記し 住所・ご氏名・番号、御参加人数をお書きの上、
下記までお申し込みください。
 折り返し整理券(地図付)をお送りいたします。
○宛先〒590ー0531泉南市  岡田2ー190ー7 貴志清一


【ご案内】
「尺八吹奏法U」ご注文の節は、 
邦楽ジャーナル通販 商品コード5241、http://hj-how.com
(送料別途)

「尺八吹奏法(運指編)」(1,000円)のご注文はハガキにて下記へお申し込みください。
〒590-0531 大阪府泉南市岡田2-190 貴志清一