会報 No.18

論説 研究資料紹介「楽器の音色を探る」(安藤 由典著 中公新書) 貴志清一

 今から7年前の1989年、「尺八吹奏の基礎」と題しまして五回にわたり邦楽ジャーナルに尺八吹奏の原理を掲載させて頂きました。 この文はかなりの反響を呼び賛否両論、いろいろの意見が出ました。 この「尺八吹奏の基礎」によって尺八が上達された方も多いと聞いています。

もちろん会員の皆様はこの理論を基礎に、日々練習に励んでいらっしゃることと思います。
ではどうして私がこの理論の中の「唇の丸み」「口腔前庭」を思いついたのかと言うことについて述べ、ヒントになった本を紹介したいと思います。

 まず「唇の丸み」『楽器の音色を探る』からです。私も尺八を習い始めてかなり長い年月、乙のロをしっかりした音で鳴らすことが出来ませんでした。一番尺八らしい音の乙のロが出ないと言うことはかなり辛いことでした。何年も悩みました。しかし、こういう悩みは辛いことは辛いですが、鳴らそうという明確な目標がありますので結果的には人生のその時期にとってよいことだったと思います。

 とは言うもののそれは今から考えてのことで、その時期は、やはり乙ロが出ないことは辛いことでいた。 悩みあぐねていますと、大阪の万博跡の国立民族学博物館でたまたま「楽器の音色を探る」と言う本を見つけました。もともとフルートは吹いたことがありますので立ち読みしていますと、「これはすごいことを書いている」とわかり、早速買い求め何回も何回も読みました。

 書いてあることを自分なりに言いますと、

・フルートと尺八は全く同じ原理でなる楽器である。
・フルートの低音は機械でも朗々と鳴る。
・だから尺八の乙ロも朗々と鳴るはずである。
・機械に出来ることが、人間に出来ないはずはない。
・その原理は、特に上唇に十分な丸みをもたせ管の中へ(メルのではなく)吹き込むようにすればよい。
・だから、尺八の乙ロは合理的な訓練さえすれば誰でも鳴らせるのである。
・すなわち、乙ロが鳴るということはなんら神秘的なことではないし、また上手な人だけの特権でもない。

以上のようなことを確信しまして、それからは、”鳴るはずである”という気持ちで練習してきました。実際今では乙ロは十分鳴ります。(日によって調子の悪いときもありますが。)

 そしてふと自分の周りの尺八愛好家を見渡してみますと、なんと私と全く同じようなことで困っている人がいやと言うほどいることに気がつきました。最悪は”鳴らないからやめてしまった”人もいるということです。

 これではせっかく日本人が数百年かけて育ててきた尺八という文化をみすみすダメにするようなものだと感じました。 それで名もなく力も無い私ですが、微力ながら少しでも尺八文化に役に立てればという気持ちで「尺八吹奏の基礎」を著したのでした。

 さて、この「唇の丸み」の基礎になった『楽器の音色を探る』を購入された方にご説明させて頂きます。 「フルート」と書いているところは「尺八」と読み変えても全く同じですので、そのつもりでお読み下さい。

   ※「口腔前庭」の基礎になった本はまた会報で紹介いたします。



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