戻る

インターネット会報2010年12月号
筝曲 ”六段の調べ” について
                                            菊苑 馨(当道音楽会)
 私は、かれこれ50年以上前に ”六段の調べ” を習いました。
 この「六段の調べ」について感想のようなことを書かせていただきます。
 これは月に一回の合奏研究会にて、実技はもちろんのこと、邦楽の理論や歴史についても互いに勉強し合ってきましたささやかな成果の一つでございます。 
 この曲については今から350年ほど前に出版された一節切・箏・三味線入門書「糸竹初心集」に原曲が載っております。
 また。江戸時代の歌謡などの研究で著名な 故平野健次さんが復元演奏のレコードを作成しその解説書で明快な考察をされていますのでぜひご参考にしてください。(平野健次邦楽文庫)
http://homepage2.nifty.com/~bunko/data/k27.htm

(このアドレスに人差し指マークがでないときは、お手数ですが、このアドレスをコピーして、ワードに張り付けてください
「Ctrl(コントロール)を押しながらクリック」のメッセージがでますので、その操作をしていただければ所定のHPに飛びます)

 さて、来年2011年1月30日のグループ遊戯・尺八吹奏研究会、新春演奏会にこの「六段」を尺八入りで演奏することになっていますので、今一度きちんとその由来を確かめるのも大切だと考えております。
 現在出版されています新しい楽譜には、何の説明も御座いませんが、昔の私の楽譜には次のように書かれております。

 「六段は筑紫琴の内に輪舌と称し歌詞なくして、陰陽の二曲ありて、是を同時に合奏し神前に供へる事としてありました、此の輪舌を根本として一段二段等となし六段を以って一曲とし當流琴曲の表組の中に加えたので是が即ち今の六段です。
 その後隅山、生田、藤池、山田と云う諸法師がこれを継ぎ今にそれが残って居るのです、よって六段には生田流とか山田流とかの区別はないのです山田流に前歌を附けたのは近頃の作です。
 要するに此曲は純然たる形式音楽で、萬世不易の名曲であります、尚此曲の初めは極めて静かに弾かねばなりませんが、漸々早くなりますから四段以下は格別の練習が必要です。一説に六段の原曲は彼の有名なる支那萬里の長城のほとり騎馬武者の轡の音を音楽に現はしたものと云う事です。」

 この解説はかれこれ50年ほど前に書かれたものですので、その間の邦楽研究の成果は当然反映されておりません。
 貴志さんのホームページ9月の181号で紹介されています「糸竹初心集」には「六段の調べ」の元の「すががき」と「乱輪舌」の元の「りんぜつ」が既に別の曲として存在します。
 また、何よりもこの江戸初期は半音を含まない律音階(陽旋法)で演奏されていましたが、八橋検校が今聴かれるような都節音階(陰旋法)で調弦し始めたので転調を含むいろいろな音楽の可能性が生まれてきたのでした。
 すなわち、この「糸竹初心集」時代の一節切と箏、三味線の合奏は律音階の明るい音でなされておりましたが、都節音階に移行していく中で手も技巧的に難しくなり、しかも後の段は速くなってきました。それに付いていけなくなったのでしょうか、一節切がだんだん脱落し、今では「六段」は箏の独奏曲そのものです。
 しかし、音域も狭く半音も不安定な一節切ではなく、2オクターブの音域と安定した音程を獲得した普化尺八にとっては、この「六段」はさほど困難な曲ではないと思います。
 新春の会では350年、もしかすると400年に亘る「六段」の歴史を展望する意味でも、尺八と息のあった合奏にしたいと思っております。
 この曲は年齢を重ねていけばいくほど「良い曲だなあ。」と実感させられる名曲です。今から楽しみにしていおります。


【ご案内】
「尺八吹奏法U」ご注文の節は、 
邦楽ジャーナル通販 商品コード5241、http://hj-how.com
(送料別途)

「尺八吹奏法(運指編)」(1,000円)のご注文はハガキにて下記へお申し込みください。
〒590-0531 大阪府泉南市岡田2-190 貴志清一