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インターネット会報2011年2月号


一年を振り返って
ペンネーム 興竹藤(キョウチクトウ)


 尺八は難しい。全く以って、尺八は本当に難しい。初心者の私が、生意気にも言うことではないと自覚しつつ、改めて、尺八を吹奏することの奥深さを実感した一年でした。
 貴志先生に入門して約一年が経ちました。自身の反省と今後の練習の糧とするために、改めてこの一年のけいこを振り返ってみてみました。また、同じような悩みをお持ちの初心者の方の参考になればと思います。

 たまたま、尺八を聴く機会があり、その「音色」に興味を持ったのがきっかけです。尺八に関しての知識などもちろん何も無く、趣味のひとつでもなればいいかなという程度のスタートです。
 何度か演奏会に聞きにいくにつれ、すっかりその音色の虜になってしまいました。
 そこからが苦闘の始まりです。なんとか尺八を朗々と吹き鳴らしたい、あの音色を出したいという思いがますます強くなっていきました。
 三曲合奏がやりたいとか、琴古流の本曲が吹けるようになりたいとかなど、はっきりとした目標があった訳ではありません。人前で吹ける程度の技量を身につけたいという思いと、演奏会などで聞くあの「音色」を自分で吹き出したいという思いです。

 楽器の習得は簡単なものではないということは経験の中で理解していました。凝り性の性格からもひたすら自分で練習するしかないと考えていました。しかし適切な指導はどうしても必要です。
 時間は短いもののほとんど毎日欠かさず練習しました。朝晩です。音が途切れます。音がかすれます。途中でどうしても鳴らなくなります。幸いなことにこんな状態でも尺八を吹くことが全くいやにならなかったことです。そして、一年経ち、2年経ち、音色云々どころか、初伝といわれる曲も満足に吹奏することができずもがいていました。
 インターネットの情報を漁りながら自己流で、甲音を出すにはどうしたらいいか?ツのメリ音を容易に出すようになるためにはどんな練習をすればいいのか?等々つぎつぎと疑問難問が・・・・・。
 そんな中で、邦楽ジャーナルが取り扱っています「尺八吹奏法 U」を見つけました。早速、購入し自己流で試してみましたが、余りにも基礎的なことが身についておらず、言葉では理解できても実際の音にはなりませんでした。
 幸い著者の貴志師は電車で1時間半ほどの所にお住まいですので、この本に書いている内容を理解し会得するにはご本人に教えてもらうのが最上の方法だと気づきました。
 なんとしても、「口腔前庭」はもちろんのこと、「唇の丸み」や「腹式呼吸」を習得しなければの一念でまさに、「藁を掴む」思いでの入門でした。
 けいこ初日から「ハロー」「ハロー」「・・・」「・・・」の繰り返し。自宅でのけいこも同じく「ハロー」「ハロー」「・・・」「・・・」の繰り返し。ひたすら日々の音だしのけいこに明け暮れる日々。そんなんか、最近ようやく、徐々に音色の変化が自覚できるように。
 出なかった乙ロも安定して・・・・・まさしく「ハロ−」効果です。
「口腔前庭」「唇の丸み」の実践と合わせて、もっとも影響を受けたのことのひとつが「腹式呼吸」です。

「腹式呼吸」の実践の中で、師匠の下腹背中側が大きく膨らむのを実際に触って体験し、余りにも大きく膨らむことにびっくりでした。日々の「ハロー」の中で意識しつつ少しずつ「腹式呼吸」も身に付きつつあります。

○「新しい(新鮮な)息」を下腹にたっぷりと吸い込んで、下腹周りを大きく膨らませ、少しだけ腹筋に力を掛けて、「す−うと」息を自然に出す。

○「ポイント」を探りながら少し横ユリをかけ、最も鳴るポイントを見つけたら、ユリのないロングトーンで息を落とし込んでいく
 師匠は「音楽表現のためには過度にならない程度の横ユリ練習は必要だが、常時ユリを入れるのは最も良い音を出すポイントを常時外す、即ち、真音を出さない練習になるので気をつけるように」と仰います。

○息がポイントに当たっていると、消え入るような小さい音でも鳴り続ける。しかし、これが難しい。毎日々、「ハロ−」「ハロ−」・・の音だしの練習。少しずつポイントに近づいて来る。音の響きがだんだんによくなる
 ちょっと油断すると、「ハロ−」がヘロ、ヘロ、ヘロ・・・・とへろへろになってしまう。

 息を吸い込むためには、息を吐ききることを忘れて、一生懸命胸で吸ってしまう悪い癖がすぐ出る。何度も注意される

 一年を振り返って、少しずつ「音色」が変わってきていることが実感できてきています。全く褒めない師からも、尺八らしい音になってきたとの言葉。

 さて、昨年10月に新春の演奏会で演奏することが決まりました。音作り、本曲の指導と同時並行で練習してきた「千鳥の曲」です。過去2回の人前での演奏は散々なものでした。今回失敗したら、師になんと説得されようと今後しばらくは自信がつくまではおさらい会は遠慮しようと心に決めての挑戦になりました。
 「人前での演奏は自己の演奏能力を飛躍的に伸ばすよい機会になる」と仰るのですが、いかに厚顔無恥な性格もさすがに人前での演奏にはまだまだ程遠いとの自覚がありました。

 定例のけいこ日に演奏会向けの特別のけいこがあるわけではありません。いつものように音作りからです。そんな中、お琴の先生との合奏練習を2回用意していただきました。生琴との合奏は初体験でしたので、本番に向けてこの2回の合奏練習は随分と自信となりました。

 本番当日。過去の失敗のトラウマがひょと顔を出します。そんな緊張の中、演奏スタート。「リ−リレツリ」やっぱり音が震えている。「危ない、落ち着け!落ち着け!」と自分に言い聞かせながらなんとか最後まで吹き切ることが出来ました。そして、なんとあの緊張しながらの演奏の中で最後の「レ」の音まで尺八が鳴ったのです。信じられません。
 演奏直後、お琴の先生からなんとなく「大変よくできました!」と褒めを頂いたような眼差しでの挨拶。帰り道、師匠からは少しのお褒めをいただき、尺八を始めて一番の達成感です。

 少しずつでも上達していることが実感できる、この楽しさは何ものにも代えがたいものです。
 やっぱり、尺八は本当に難しい、しかも奥が深い。しかし、尺八は楽しい、これがこの一年間を振り返っての実感です。
 まだまだ、初心者レベルの中でもがいている最中ですが、趣味の領域を超えたところで、尺八に係われることは、尺八に出会ったおかげ、師に出会ったおかげと感謝しています。
 
 ちなみに、こんな初心者程度の実力しかないにもかかわらず、けいこに当たっては私の希望をいれて頂き、琴古流本曲のけいこも合わせて指導していただいています。「鹿の遠音」が吹けるようになることが目標です。でも余り残された時間はありません。とにかく頑張るしかありません。
(以上)


【お便り紹介】】
(愛知県F氏より)
 連載されていました「揺り」についての検証を読み、曲の場面場面で気分で揺っていたことに対し考えさせられました。
 私が以前、この人の揺りは「すごい」と思った人がいます。周りを引き込むような揺りで、思わず体が演奏者に吸い込まれる感覚になりました。強→弱(デクレシェンド)に見事に揺りがかぶさっていました。
 今は故人の方ですので再度聞くことは出来ませんが、聞いていて気持ちが良くなり、気分が落ち着いたことを思い出しました。

(事務局より)
 お便りありがとうございました
 たいへん有益なお話をお聞きいたしました。「周りを引き込むような揺りで、思わず体が演奏者に吸い込まれる音」ということで、不可能なことは分かっていますが、ぜひ聴いてみたかったです。
 「尺八奏者のビブラート」という連載を5,6回ほどさせていただきましたが、いまだにお約束の冊子が仕上がりません。期待してお待ちになっていらっしゃる方にはお詫び申し上げます。
 どうも、今回のビブラートは“練習したら確実にすばらしいビブラート(ゆり)が獲得できる”という保証はできにくい分野です。また、ビブラート練習のしすぎや、ビブラートによってユリのない真っ直ぐな音のロングトーンの練習を忘れてしまう愛好家が出てきては逆効果です。
 そのため、確実に誤解を生じない書き方が絶対に必要になります。ですから原稿がまだまだ試案の状態のままです。今暫く「尺八奏者のビブラート」冊子はお待ち下さい。(貴志清一)


【ご案内】
「尺八吹奏法U」ご注文の節は、 
邦楽ジャーナル通販 商品コード5241、http://hj-how.com
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〒590-0531 大阪府泉南市岡田2-190-7 貴志清一