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インターネット会報2011年9月号

まことしやかなウソ“あくびのように喉を開けなさい”、素人を翻弄させる“声帯を絞めなさい”、について
(11月6日個人講習会)
                                                             貴志清一
 まずはじめに11月6日に予定しています尺八吹奏研究会個人講習会についてです。この日は私の小さな演奏会の後の時間を使いまして実施いたします。会場は公共の文化財:佐野町屋館という江戸時代の醤油問屋の建物です。 尺八吹奏に関しましていろいろなご質問、ご教示、お話等に拙宅までお越しいただく方も少なからずいらっしゃいますが、たいていは流派から自由な立場の人が多いです。自由な立場の人は、もし技術的な悩みをお持ちですといわゆる“ワンポイント・レッスン”で、いろいろアドバイスができます。比較的自由な時間がありますので、たいていご対応させていただいています。その場合、その時に出る質問自体が私にとってたいへん参考になることもたくさんあり本当に良い勉強になります。
 しかし、まだ初伝・中伝・奥伝の段階の方は、なかなかお越しになりにくいようです。尺八吹奏研究会は流派を越えて、尺八はどうすれば鳴るようになるか、どうすれば演奏技術が向上するかを考えるところですので、まったく流派的なものは考慮に入れない会です。
 しかし、現実はそうもいきません。以前のことですが、吹奏上のことでいろいろ悩んでいらっしゃる方が稽古場にいらっしゃったことがありました。練習方法等のお話をしていたのですが、どうも流派的なことを気にしていらっしゃいましたので、わたくしも何となくその雰囲気を感じました。普通なら実際に尺八を吹いてもらい、できる範囲で何か呼吸法とかアンブシュア(口の形)とかをアドバイスするのですが、“それはしない方がいい”ということを察知しまして結局ありきたりの話でやり過ごしました。
 お越しになられたその方は、ある程度のアドバイスが欲しかったようですし、私もなにか有効な指摘や今後の練習法を言いたかったのですが、結局、何もできませんでした。もちろん、これはワンポイント・レッスンではなかったのですが、どうも尺八界の空気はいまだに江戸時代の封建制度の段階かなあと思いました。 
 前置きが長くなりすぎましたが、個人講習会を8月に続いて11月6日にもさせていただくのは、ひとえにワンポイント・レッスンで私の稽古場に来にくい方のためです。自由な立場の方や極めて遠方の方はわざわざ個人講習会に来ていただかなくても拙宅へお越し頂けるのですが、しがらみがあるけれど、少しでもアドヴァイスがほしい方にとって“公共施設での、一回限りの講習”であれば来て頂けると考えています。
 11月6日は尺八本曲とギター伴奏による子守唄や流行り唄の演奏会ですが、終了後2時間ほど、この個人講習会を実施します。

 さて、本題からは横道にそれてしまいました。今から、
まことしやかなウソ“あくびのように喉を開けなさい”、素人を翻弄させる“声帯を絞めなさい”、について考えていきます。
 この“喉を開ける”とか“喉を絞める”とかいうのは、実際の個人講習でよく話題になることが多いですね。
 尺八を吹いているときに喉に力を入れて吹くと、音が硬くなり、下手をすると“喉がウーウー鳴る”極めて悪い状態になります。これを回避するために巷では“あくびのように喉を開けなさい”と指導されます。また、尺八の指導書等にも書いていることがあります。
 私も常日頃、自分のお弟子さんには“喉に力を入れないでください!”と指導します。それでも直らないときには、吹くのを止めてもらい、肩回し運動か何かをしてもらいます。すなわち、喉に力をいれるのは尺八吹奏にとって、極めて悪影響を与えるものです。
 この点を、きちんと確認しましょう。
 さて、それではというので「あくびをする時のように喉を開けなさい」という指導法がよく聞かれます。
まだ良い奏法を獲得していない尺八吹きは、この言葉をよく誤解します。そして、演奏中に喉を無理に広げ、またはあくびのイメージを持って音出しをします。すると、音は3,4秒しか続きません。その出る音も空虚な音色になってしまいます。それでも“あくびをする時の状態が尺八吹奏にとって最高だ”と信じて吹き続けますと、もうあとはまともな音が出ないというスランプにおちいります。

 正しい考え方は、こうです。
「あくびをする時のように喉に力を入れないで吹く準備をします。後は喉のことを意識しないで、朗々と音を出し続けてください」
 これが、“あくび”の本来の意図するところです。
喉に声帯がありますが、喉を開けるイメージでは声帯が開きすぎて息のコントロールが阻害されます。
その声帯の隙間を開けすぎる弊害を指摘したのが、確か“密息(みっそく”の考えだと思います。
実際の自分の演奏を顧みますと、岸に打ち上げられて口を開いたサバのような感じでは決して吹いていません。密息の本を出した人の言うように、おそらく声帯はかなり接近しているでしょう。ちょっとした意識で吹いているときに声が出せる状態です。もちろん、決して声がでる=喉が鳴ることはしません。喉が鳴ると演奏どころではなくなります。
 しかし、指導者に恵まれない奏者は「密息か、ようし、声帯を近づけるのだな!」と勘違いして、こんどは喉を鳴らしウーウーウーと、聞くに堪えない雑音を出しながら、しかも頼りない尺八の音で演奏します。悪いことに、喉が鳴っていると、その雑音によって、自分が“わりといい音を出している”と幻想することです。
 これは、初伝・中伝級の人ばかりではありません。師範・大師範というかたでも、この喉の鳴る悪い癖を持った人は数え切れないほどいます。
 こういう問題をワンポイント・レッスン等で指導することがよくあります。実際に、何らかのしがらみでこの“喉”のことを質問したいと思っていらっしゃる方は、そして、稽古場に来にくい人、もちろん遠方の方は、この文面にてご理解下さい。
 正しい“喉”の考え方は、“喉を開けて吹く”のでもなく、“喉を締めて吹く”のでもありません。喉をリラックスさせて、お腹をしっかりささえて吹くのです。
 それでも実際に、声帯の幅を理想的な隙間にするにはどうしたらよいのでしょう。ここでは、その一つの練習方法を紹介します。この方法は将来発表したいと思っています「尺八奏者のビブラート」(冊子)に掲載しようかと考えているものです。
 この方法はまだ、試案の段階ですので、私が横に付いてチェックしながら練習しなければいけませんが、敢えてこの“喉”で悩んでいる方のために逆効果を恐れずに書きます。従いまして、試される方はかなり慎重にしてください。

 理想的な声帯の幅を獲得する一方法(試案)

(準備)音の出るチューナーを用意する
1.チューナーでD(乙ロ)を鳴らし、その音に高さを合わせ「ローーーーー」と何回も歌う。
2.同じ要領で「ローオーオーオーオー」と何回も歌う。丁度軽いビブラートがついたような歌になる
 (考察)この「オーオー」の時に、声帯が振動しているにもかかわらず微妙に近づいたり遠ざかったりするので、理想的な振動の獲得に資する。
3.次に、声を出さないで息だけで、1.2.を何回も練習する
 (考察)この時の息が理想的な声帯の幅に近いだろう。
しかも、喉のどこにも力が入っていない状態を実現できる。
4.この1.2.3をF(ツ)、「ツーーーーーーー」「ツーウーウーウー」
  G(レ)A(チ)C(りorハ)そして、裏声にして、D、F、G,Aまで練習する。(裏声になるのはチからでも全く問題ない)
5.この練習は個人差はあるが、一日10分以上する。
6.個人差はあるが、最低3ヶ月は続け、できうれば一生練習する
 (音響事情が許さないときは小さい声でも効果は十分ある)

 さて、以上の方法は私自身がここ数年、自分を実験材料にして試してみたことです。私にとって、効果が見えてきた(もともと、この問題では悩まなかったので実例にはなりませんが)のは、3ヶ月目くらいでしょうか。
 但し、効果は数週間で出るかも知れませんし、何年もかかるかも知れません。また、この方法よりももっと効果的な方法が、おそらく、あるでしょう。 いずれにしましても、この方法を試された方、そして、もっとよい方法をご存じの方は、是非お便りをください。お願い申し上げます。
 〒590-0531 大阪府泉南市岡田2-190-7 貴志清一 宛

 個人講習会の話から喉の問題と、とりとめない記事になってしまいました。 お読み下さいましてありがとうございます。
 猶、ワンポイント・レッスン等の案内はHPの「貴志清一尺八教室」をおよみください。
 また、11月6日の個人講習会は3時〜5時で、2人のみの参加となります。(会場:大阪府泉佐野町屋館 文化財新川家)


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