会報 No.20

論説 音に艶を与える 貴志清一

 高知県の 藤田 閑山 氏より「音に艶を与えるための技法について、悩ん でいます。」とのお便りを頂きました。 何かの参考にと、私の考えを述べさせ ていただきます  この問題はたいへん難しく、おそらくほとんどの人が一生か かって取り組むべき問題だと思います。

 会報28号で紹介しました安藤由典氏の『楽器の音色をさぐる』の中でもこ の問題を取り上げていますが、一つの方法は物理的に言えば倍音を増やすことです。息が唄口に当たるときに発生するジェット気流によるカルマン渦に高周 波数の要素をたくさん与えることかも知れません。(素人考えなのですが。)  さらに、偏心角を深く取ると音に含まれる奇数次、偶数次倍音の勢力比が変わり これも音色に関係があります。 そして、楽器自体の性能も少し関係がありそう です。

今年の五月広島の 水田氏とご一緒に小林一城氏のお宅にお邪魔したとき6寸 管が3本ありまして試奏させて頂きました。明らかにその内の1本は吹き易くし かも音に艶がありました。客観的に吹いたのにこの違いは何だろうと言う話しに なりましたが、結局楽器の特性かなと思いました。

 しかしそうは言っても、尺八を吹きこなせなければ話しになりません。わたしたち実際の吹奏者にとっても っともっと重要なことは、「自分の、まさに今でている音色が艶があるのかない のか」 と言うことです。艶がなければ何とか艶のある音を出そうと努力してい る内に艶のある音をだんだん獲得できるのだと思います。

奏者によって天と地ほどの違いのあるヴァイオリンの音色で考えますと、素晴らしい音色のハイフェ ッツ(故人)はおそらく物理学や音響学には詳しくはなかったと思います。しか しその奏でる音色は本当に艶があり、個性があり素晴らしいものでした。尺八は 気柱共鳴楽器ですので、ヴァイオリン以上に演奏者によって音が違います。

尺八では例えば 艶のある音色で吹く山口五郎師は、おそらくカルマン渦や音の倍 音の分布、奇数次倍音などは考えては吹いていないだろうと思います。 いい音 色、艶のある音色はそういう分析的なことでは決して得られないものです。 私 は若いとき理科系でもないのに音響学的なものに興味を持っていました。ですか らもしかしたら、他の尺八奏者よりは音響学的なものを良く知っているかも知れ ません。しかし実際の私の演奏を聞かれた方もあるのですが、もう本当に素晴ら しく艶のある音では、決してありません。(努力はしていますが) 

そう考えてきますと、日々「自分の、まさに今でている音色が艶があるのかないのか」と考 えながら練習する以外にはないと思います。

論説  尺八独習について秋山 康郎

独学を貫いてきた私の感想をのべます。 全くの独習は一言で言ってきわめて 難しいし、効率の悪いことはいなめません。自由である変わりに義務もなく、そ の結果は一進一退で、進歩はまさに亀の歩でした。 単に歌謡曲のいくつかが吹 ける程度になら、市販の独習書、ビデオ、テープなど参考にしながら、飽きずに 練習さえできれば独習でも十分可能です。 

しかし、邦楽となりますと我流ではどうしても分からない点が多く、行き詰まってしまいます。ただ、新曲ですと 何人かのプロの演奏テープか何かを幾度となく聴き返しながら、何とか真似ごと で、自分で楽しむ程度にまではなれましょうが、古曲・古典ともなりますと特殊 な運指・技巧も必要で、全くの独習ではまず不可能と言えます。こういう場合、 ちょっとしたヒントなり手ほどきの有無でずいぶん違ってきます。

この会報の記事にも非常に有益なものがありますし、本会のビデオ指導など、まさにうって つけの有効な手段だと思います。 ただプロの演奏でもそれぞれに特色があって 、これこそ絶対「純正」というものはなさそうで、決して画一的な吹き方ではな いところに、わたしたちはまた迷うこともありますが、これは何も尺八に限らず 一般的に言えることでしょう。ですから余り堅苦しく思いこまずに、要は、吹い ていて気分が良く、聴く人をして引きつけるあるいは心地よくさせるものこそ最 高と心得て、教わった事柄をベースにして、自分なりにより豊かな表現のあり様 を求めて努力をしてゆけば良いのだと思います。 それに、手を染め易い歌謡曲 でも尺八は十分に楽しめますし、かえって一般受けいたします。

 そして、邦楽の道も”是非”という欲がでてくれば本腰をいれてこれに挑戦するという道筋も また結構な行き方ではないでしょうか。 黒髪・六段にこだわらず、多用な入り 口からもっと多くの人が興味を持って、この尺八に馴染んで欲しいものだと思っ ています。

私の合奏勉強法 (滋賀県 永井氏より)

私の合奏勉強法を述べます。

1、尺八のパートが、乱れなく、正確に吹けるようになるまで、良く練習する 。

2、箏、または三弦の楽譜に、尺八の楽譜を併記した総譜を作る。

3、尺八の楽譜に、前唄、前唄から手事に移るところ、チラシから後唄になる ところなど、要点の部分の箏、三弦の楽譜を記入する。

4、箏と三弦の合奏、または三曲合奏のテープを聞きながら合奏練習をする。

5、お箏の先生の元に弟子入りして稽古日に合奏のお相手をしていただく。 

私は、家内共々、お箏の先生の所に毎月1回参上し三曲合奏の勉強をしており ます。何よりの楽しみにしています。


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