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インターネット会報2013年2月号

小学校・邦楽鑑賞会での尺八演奏〜尺ーダーの紹介〜
貴志清一
 邦楽の衰退を心配している人々は学校の音楽教育の中で日本の伝統音楽に触れる機会を増やすことが
必要だと感じています。私もその中の一人なのですが、たまたま知り合いの小学校の音楽専科の先生から
尺八・箏の演奏を頼まれまして、「邦楽普及の機会になるかな」と思い1月24日に大阪の貝塚市立東小学
校へ出かけました。
 児童生徒の前で演奏するのは4年ぶりでいつもの演奏会のようにはいかないことが心配でしたが、20年
以上も前からの知り合いの先生ですから断る理由もなくお引き受けした次第です。
 現在、小学校5年生の教科書に鑑賞曲として「さくら」や「春の海」が載っていますので、この2曲は必ず
演奏してほしいとのこと。そして、尺八・箏の楽器紹介もしてほしいとのことでした。
 尺八を紹介するときに、単に「穴が5つ開いていて、斜めに削った歌口に息を入れると音がでる」だけでは
あまり興味を示さないかも知れないと思い、よく使う「尺八体験コーナー」で代表の子供に尺八を試し吹きさ
せることも考えました。
 しかし、今回は時間の制約もあり尺八の説明ばかりもしてられませんので十数年前に作った「尺−ダー
(しゃくーだー)」を使ってみることにしました。これについては尺八吹奏研究会・HP、no.7号で詳しく説明して
いるとおり、子供達の使うリコーダーの歌口(ノズル)を切り取ったものです。
 このノズルを切り取ったリコーダーは、まさに尺八の歌口を備えた楽器で、出る音はほとんど尺八そのものです。
 今回はこの「尺−ダー」を使い、
○日本音楽で使う尺八と西洋音楽で使うリコーダーは兄弟のようなもの。
○その証拠に、リコーダーのノズルを切り取れば尺八のような音になる 
 これを説明に使おうと考えました。
 実際の鑑賞会での反応はなかなかよく、いつも自分たちが吹いているリコーダーが尺八と深い関係にあること。
そして、リコーダーのノズルを切り取ればそれは「壊れた」ことになるので音が「鳴らない」と予想したにもかかわ
らず「音」が出て、しかもその音が「尺八のような音」だったことに素直に驚いていました。
 この会報をお読みの方々の中にも、学校の邦楽鑑賞で尺八を吹く機会の多い人もいらっしゃるかと思います。
よろしければ、お試し下さい。
 さて、私はブラスバンドのフルート出身ですので、今でもフルートで簡単な曲は吹けます。そこで、フルートを
「尺八の親戚」という位置づけで吹いてみました。教科書にある滝廉太郎の「花」も子供達の知っている曲だと
いうことでした。ただ、「花」という西洋音楽的な曲を尺八で吹きますと曲の良さが若干損なわれるのではないか
と思い、箏の伴奏をバックにフルートで演奏しました。
 以下、簡単な邦楽鑑賞会の「曲」とその流れを書かせていただき、学校公演を予定されている尺八奏者の方々
の参考にさせていただきます。

曲○「さくらさくら」(箏独奏)
(言葉)今日は昔からの日本の楽器を紹介します。
弦をはじいて弾いたのが「琴(こと)」です。
そして、みんなのリコーダーと同じように、縦に吹く楽器がこれで(上に上げて見せる)「尺八」と言います。

(言葉)尺八は江戸時代の「虚無僧」(と言いながら模造紙大の虚無僧の絵を張る、磁石をあらかじめ裏面に付け
ておく)が吹いた楽器です.今から400年ほど前の「鶴の鳴き声」の入った曲を演奏しましょう。
曲○「鶴の巣ごもり」(尺八独奏)

(言葉)鶴の鳴き声に、聞こえましたか?
 けれど、いまから150年ほど前の明治時代に入ると尺八と琴と合奏するようになります。
 その中でも特に有名な「春の海」を演奏します。
曲○「春の海」(尺八と箏)

(言葉) 春に広い海辺にでてのんびりしている気分を感じましたか?
(言葉) ここでお琴について少し説明します。
 長い桐の木に糸が張っています。何本ですか?(13本)
 これを指に付けた「爪」ではじきます。
 ピアノのように両手ではあまり弾きませんが、左手も使って音を飾ります。お琴らしい曲で、これも八つ橋検校と
いう人がつくったと言われている300年ほど前の曲を聴いて下さい。

曲○「六段」の初段(箏独奏)

(言葉)日本のお琴はヨーロッパではピアノにあたります。それで、明治時代にはピアノのことを洋琴(ようきん)即ち、
西洋の「よう」、そして琴の音読みの「きん」をあわせて「ようきん」といいました。
 ここで、実験的に、お琴とピアノの合奏をします。みんなはハミングを入れてください。口は開けないで「m−−−−」
と歌って下さい。
曲目は
○「君をのせて」(箏とピアノ)です。

(言葉)どうでしたか。ハミングという楽器も、なかなかいいですね。 ありがとう。

(言葉)さて、まだ尺八のことをくわしく説明していませんでしたね。
 実は、みんながいつも吹いているヨーロッパ生まれのリコーダーと尺八は兄弟のようなものです。
 (ソプラノリコーダーを出しながら)
(言葉)これがリコーダーですね。リコーダーの好きな人、普通の人、嫌いな人、自分のことを考えて下さい。それでは、
「好きな人、手を上げて」
 ・・・・・・・・・・そうですか。先生は尺八も好きですが、リコーダーも好きです。せっかく出しましたので、ちょっと吹いて
みましょうか。
 ○「トランペット吹きの休日」(部分)をリコーダーで吹く

(言葉)今日はリコーダーを吹きに来たのとちがうのですね。
 さっき言った「兄弟」というのは、この頭をちょん切ってしまうと、さて、どうですか(「春の海」の出だしを吹く)
 尺八っぽい音になりますね。これならお琴とあいそうですね。
 この楽器の名前は「尺−ダー?」といいます。
 どんな音がするか、想像して下さい。もしかすると、出ないかな? 
  
  さて、この「尺−ダー」で一曲吹いてみましょう。

曲○「ふるさと」(尺−ダーと箏)

(言葉)さて、尺八とリコーダーは兄弟といいましたが、尺八には親戚もいます。なにか、きんきらきんですが、この
フルート(を出しながら)も楽器に息を吹きかけて音をだすので、尺八の親戚と言えま?す。その証拠に、以外とお琴
と合うのです。最後に「滝廉太郎」という天才的な音楽家が作曲した「花」を演奏します。

○「花」(フルート&琴)
   
 (説明も含めて 約40分)

 以上、小学校での邦楽鑑賞会の雰囲気を感じていただけたでしょうか。
 当日、私の勝手な注文にも快く応じて下さったお琴の 新川恵美子先生には本当にお世話になりました。
「春の海」は439Hz、尺−ダー・フルートは443Hzということで、わざわざお琴を二面ご用意していただき、
頭の下がる思いです。紙面をお借りして厚く御礼申し上げます。


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