戻る

インターネット会報2014年6月号

        
関西一節切研究会・第T期(計10回)を振り返って
-第U期生募集中-
貴志清一

 昨年(2013)の9月に始まりました〈関西一節切研究会〉ですが、今年の6月で合計10回の定例会を終えることができました。これもひとえに一節切をご教授くださいました 相良保之先生のご恩の賜物だと感謝しております。
 さて、関西方面で1名でも参加があれば開始する覚悟の研究会でしたが幸い3名の参加者と私の4名でスタートすることができました。
 「糸竹初心集」を読み進めながら実際の一節切演奏力もつけ、最終的に一節切を深く理解するという所期の目的はほぼ達せられたと感じています。それどころか、それ以上の大きな成果も得られました。
 一番の収穫はなんと言っても〈古管に近い音色と音程の復元一節切〉が国産黒竹で実現できたことです。その製管技術を持っているのは研究会の中でもたった一人、柏木雅行さんです。私も一節切は少々製作するのですが柏木さんの一節切に比べると月とスッポンほどの差があります。
 次に大きな成果は、「糸竹初心集」を4人で「あーでもない、こーでもない」とゆっくり読み進めることによって人前にも出せる"現代語訳と解説"ができあがったことです。
 また研究会では私の外に柏木さんも古管を持っていますので、常にタイプの少し違う古管を実際に吹きながら研究が進められたことです。
 2本の古管を使うことによって「古管一節切の製管技術は極めて高い水準にあった」ということも分かりました。たとえば半音違いの2つの音を全く同じ指遣いで一節切は出していたし、その音色もあまり変化しないように製管していたことが判明しました。これにより、古管を使った「糸竹初心集(一節切の部)」全曲録音もできあがりました。(代表として貴志が吹奏させていただいてます)
 今年1月の第5回研究会のころ、せっかく大きな成果が得られたのだから、自分たち以外の一節切に興味を持っている人にも知って貰おうということになりました。それが以前に紹介した、
「糸竹初心集による一節切入門セット」です。
@「糸竹初心集」の現代語訳、解説、活字翻刻、影印(一部)
A「糸竹初心集」の古管による復元演奏
B国産黒竹による復元一節切(楽器)
(@ABをセットにすることで、一節切を目と耳と実際の吹奏で体験できます。)

 さて、関西一節切研究会・第T期の研究概要を紹介しましたが以下、各回の主な内容をまとめてみます。
1回目(2013年9月14日)
 基本資料「糸竹初心集」(活字:群書類従、影印:一節切の部)を配付して、「中世尺八の芸能」(論文)を使い一節切の概要を理解しまた。また実技として一節切指遣いと実際の音出しをしました。

2回目(2013年10月13日)
 資料「芸能の科学33」の内容を眺め、古管一節切計測図を確認しました。実技では「フホウエヤリヒ」の音出しをしました。
 この回のメインは実習でした。実際に工具を使い、各自1本の一節切製作していきました。講師は貴志が担当でしたが、進めていく内に高い製管術を持った柏木さんが指導に回り、私が弟子になって作っていくことになりました。

3回目(2013年11月2日)
 一節切研究の基礎論文「江戸初期俗謡の復元の試み」(林謙三)の紹介をし、「吉野の山」を琴譜からの復元作業をし、実際に一節切での演奏練習をしました。

第4回目(2013年12月7日)
 「三節切初心書」影印と翻刻を使い、一節切から三節切、そして普化尺八への変遷を勉強しました。実技では「吉野の山」が5つの調子で書かれているので、その転調に関しての音階練習をしました。

第5回(2014年1月11日)
 江戸初期の小歌「菅笠節」「海道くだり」の資料を使って当時の流行歌について理解を深めました。実技では「吉野の山」の五調子吹き分けに挑戦し、また「菅笠節」等の曲の吹奏練習をしました。

第6回(2014年2月8日)
 「糸竹初心集」より20数年後に出版された「紙鳶」という一節切の入門書を使い、「糸竹初心集」との違いを確認しました。
今回より一節切の本曲とも言える"手"の曲「初手」「安田」の吹奏練習も始めました。

第7回(2014年3月8日)
 一節切についての初めての書物「短笛秘伝譜」を概観しました。また最近出版された『竹を吹く人々』を討議し、とくに司馬遼太郎旧蔵の「洛中洛外図」の鮮明な薦僧部分の写真を使い、"絵の中の薦僧が持っているのは長管ではありえない"ことを確認しました。勿論、1600年前後という三節切的な尺八しかなかった時代に実用に耐える長管など楽器として成立しないのは常識ですね。
 今回も一節切の本曲「手巾」等の吹奏練習をしました。

第8回(2014年4月3日)
 桜花爛漫の時期で、部屋に閉じこもるよりは「花見がてら、一節切材料の黒竹を見に紀州へ行こう。時間があれば普化尺八発祥の地、興国寺へも回ろう」という企画でした。
 これは4月号「竹林で聴く尺八」で詳しく紹介していますので、そちらをご覧下さい。
 大きな成果としては、なぜ一節切だけが竹を天地逆にして製管しているかのヒントが得られたことです。これは実際に根から竹の先まで自然に生えている黒竹林を見ることによってわかったことです。すなわち、一節切は節上部が下部よりも細いことで微妙な音程の使い分けができているのですが、その形状はどういうわけか天地を逆にした竹の部位が理想みたいです。そして、自然に生えている竹は根元が太く先細りになるのですが、一本の竹にたった一部分だけ下の方が上の方よりも細い場所があるのです。昔の人は膨大な時間をかけてこの部位が一節切に最適だということを発見したのでしょう。この事を実際に黒竹が生えているところを見て実感したのでした。
 一節切セットに添付しています加熱燻蒸による国産黒竹製の復元一節切は実際、3,4mの竹から1本よくて2本しかとれないのです。薬品処理の危険性はあるのですが、一度農業用輸入竹をホームセンターで買ってみて自分で一節切を作っていただければよく分かります。ほんとうに一節切にできる部位は1,2箇所しかないことが理解できるでしょう。しかも内径がドンピシャ一節切に適していることが必要ですから、下手をすると2,3本もの竹から一節切1本しか取れないこともあります。さらに、それを楽器として「糸竹初心集」を復元できるレベルに製管するのは至難の業だと思います。私もある程度一節切を製作しているのですが、研究会が始まり、その都度柏木さんが持参する試作品を吹いている内に自分の腕のなさに嫌気が差し、製管はあまりしなくなりました。時間を作って柏木さんに製管弟子入りをしようと思っています。

第9回(2014年5月10日)
 読み合わせと実技練習の会はこの回で終了でした。6月は第1回関西一節切研究会の発表会ということで、演奏会を持ちました。
 5月のこの会は戦国時代を旅する連歌師として生きた宗祇の弟子・宗長の日記から一節切に関する箇所を読み合わせました。
 実技では手の「ころび」を練習する予定でしたが、6月の演奏会の各自の発表曲を少し練習しただけで、あとは今までの思い出話的なことになりました。特に一節切から離れるのですが、柏木さんの自作地無し管の試奏やら評価で花が咲き「本当に一節切の研究会?」といった感じで最後の会合を終わりました。
 これで第T期は終わったのですが、今までの成果をもとに「短笛秘伝譜」という今まで纏まった研究のない文献を読んでいこうというこで、上級コース的な会合を持つことも決定しました。

第10回(2014年6月1日)
 この日は関西一節切研究会第1回演奏会と銘打って発表会をしました。幸い30人ほどの来聴者があり真剣に一節切の音色に耳を傾けてくれました。また、一節切だけでなく尺八本曲、地歌、薩摩琵琶等の演奏もあり変化のある会になりました。

 以上が関西一節切研究会第T期の概要です。現在の尺八を深く知るためには一節切研究は欠かせません。概算でしょうが、日本の尺八人口よりも日本以外の尺八人口の方が多いと噂されている現在、外国の尺八奏者達も一節切には関心を寄せています。近い将来、物事を徹底的に追求するアメリカ・ヨーロッパから優れた一節切の研究成果が出てきて日本の尺八吹きが「あっ、そうか」と感心しながら教えて貰うということだけは避けたいと思っています。
 わたくしたちは東洋音楽学会にも属していませんし、ましてや大学の研究機関には見向きもされない関西一節切研究会ですので、会の微々たる成果というのは極めて影響力の少ないものだと思います。しかし、「糸竹初心集」の英文現代語訳と論考がヨーロッパで出た時、せめて「それって、関西一節切研究会が数年前にしているよ」と向こうの研究機関に堂々と知らせられたらいいですね。日本人の中にもコンピューターやゲームばかりしないで、自国の伝統文化・遺産を大事にしている人間も居ると堂々と胸を張りたいですね。
 今回の論説は最後、老人の繰り言のようになってしまいましたが関西一節切研究会第U期の募集要項を下記に記します。内容はT期とほぼ同じですので、ご興味のある方はお申し込み下さい。


関西一節切研究会 第U期生募集について

【目的】一節切を理論・実技の両面から研究し、現在の尺八を見直します。

【内容】月1回の会合を10回持ち、一節切資料の勉強会と実技練習をします。
 ・第1回目については2014年7月5日(土)午後1:00に開催
 (会場は主に・泉佐野市有形文化財・新川家)
 ・進め方は、「糸竹初心集1664年刊」を読みながら関連資料を勉強し、実際の一節切を吹奏していく。
 ※一節切は無料貸し出しができます。(国産黒竹製の復元一節切)

【会員】
 巧拙にかかわらず、尺八を愛好し、一節切に関心のある者。
 会員は10回の会合に出席し、修了会員となります。(T期の終了者は3名)

【講師】
 貴志清一他

【退会】
 会主に退会を申し出た時点で退会できる。
 ご連絡なき欠席の場合、運営上(資料作成等)支障をきたしますので退会とさせていただきます。
 
【会費】
 一回の会合毎に資料代・運営費として2,000円、その都度納入。
 欠席の場合は事前にお知らせ下さい。その時は資料を送付いたします。
 その節、資料代五百円を次回の研究会にて納入してください。

【入会】
入会資格…尺八を愛好し、一節切に関心があること。
月1回程度の会合に参加可能なこと。
入会金 ・・・なし。
入会方法 
「関西一節切研究会入会希望」と明記し
住所、氏名、年齢、竹歴、電話番号、復元一切節の貸し出し希望の有無を記したハガキを事務局までお送り下さい。
※なお、直接事務局へのご連絡でも可です。
【事務局】
 〒590-0531 大阪府泉南市岡田2-190-7 代表 貴志 清一

【配布予定資料の例】
○糸竹初心集1664年(影印版、活字版)
○紙鳶(影印版、活字版)
○洞簫曲(活字版) 
○一節切古管計測図(資料)
○一節切研究家・相良保之師論説
○宗長日記、一節切関連項目(影印版、活字版)
○林謙三「江戸初期俗謡の復元の試み」(論文)その他一節切研究論文
○大森宗勲「短笛秘伝抄」1608年(活字)


[ご案内]
「尺八吹奏法U」ご注文の節は、 
邦楽ジャーナル通販 商品コード5241、
http://hj-how.com/SHOP/696833/t01/list2.html
(送料別途)