会報 No.27

? 地歌の都山譜は”耳ざわり”? 貴志 清一

   最近、以下のようなご質問をいただきました。(匿名)・地歌を演奏す る場合、都山譜は入れ手が多く耳ざわりだと絃の先生がよく言っていると聞くの ですが、実際はどうなのでしょうか。

●都山譜は”耳ざわり”というのは都山流の皆様に対してたいへん失礼かな と思い、このお便りは匿名とさせて頂きました。 このご質問に対して、お答え できる適格者の会員の方もいらっしゃると思いますが、取りあえず簡単に思うと ころを述べたいと思います。

結論から言えば、 都山譜だから耳障りではなく、吹く演奏者の技量によって 良くも悪くもなるということです。 確かに都山譜は琴古譜にくらべて手が細か いのです。琴古流は都山流より古い関係でいわゆる”べたづけ”と言って、ほと んど三味線や箏の旋律をそのまま尺八譜にしたような作譜をしています。 とこ ろが都山流は新しいので、やはり新機軸を出すためかどうかは良くわかりません が、割合細かい音を入れて、西洋音楽で言うオブリガート(旋律を装飾する)的 な作譜をしていることが多いのです。そうすれば、三味線や箏の旋律に混じって また違う音型を聴かすことによって音楽的に豊にすることができます。 このと ころをわきまえて都山譜を吹けば”耳ざわり”では決してないと思います。  

繰り返し述べさせていただきますと、都山譜だから、入れ手が多いから”耳ざ わり”では決してないと思います。それは、尺八奏者の技量の問題だと思います 。

 前歌の歌の部分では丁度、山びこが遠くから聞こえて、それが歌に実にう まく調和して聞こえる・・・・そんな風に吹けば良いかと思います。 そんな風 に吹ける技量を尺八奏者は身につけなければならないと思います。 決して決し て歌っている糸方の声が、発音がわからなくなるような音で吹いてはいけません 。特に中習者は「私はこんなに大きな音が出せるのだぞ」と力いっぱい吹く気持 ちを100l捨てて下さい。

歌の声を消さない秘訣  糸方の歌を消さない方法は簡単です。それは、糸方の歌をしっかり聴きな がら尺八を吹くことです。 歌が聴けない状態になれば、尺八を吹くのをやめて もいいくらいです。歌が聴けない状態とはおそらく尺八の音が大きすぎるのです 。そして、やめても心配いりません。元々地歌は尺八無しで成立する音楽だから です。 歌を聴きながら尺八を吹いていますと、絶対大きな音を出そうと言う気 持ちにはならないはずです。「ああ、いい歌詞だなあ。糸の先生、今気分良く歌 っているなあ。」「ここの歌詞、身にしみるなあ。」等々。 こんな気分で尺八 を吹いていると、絶対”耳ざわり”な尺八とは言われないはずです。 もちろん 歌だけでなく、三味線も箏も同時に聴かなければなりません。これは最初は難し いことですし、一生かけても難しいですが、意識していますとだんだん良くなっ てきます。 最終的には歌・三味線・箏、それに自分の尺八を同時に四つ独立し て聞けなければなりません。(これ至難の技かも知れませんが) 宮城道雄の「 初鴬」などは旋律線がそれぞれ独立していて、その交わり具合がおもしろいので すけれど、おそらく宮城先生の意図とは離れて、演奏者も全部のパートを意識し て演奏していませんし、聴いている人も各パートを独立して聴いて楽しんでいな いことが多いと思います。 私も10年ほど昔この曲を人前で吹いたのですが、 もう吹くのに必死で結局作曲者の意図など、どこかへ飛んでしまい聴いてくれて いる人にたいへん失礼なことをした記憶があります。 どうか、この文を読まれ た方は、是非自分と・自分以外の楽器や歌を同時に聴くように努力して下さい。 お願いいたします。 技術的に言えば  特に甲音は小さくきれいな音で吹くこと が難しいものです。「毎日のウーミングアップ」を練習されている方はすでに甲 音を小さく・美しく吹けるかも知れませんが、その音を唇に力をいれないで本当 に微かな音でも出す練習をして下さい。

お便り紹介 (猪狩 氏より) 少しの時間も惜しむように練習しているのですが、未だ 、いつでもどんな時でも良い響きの音がでないで困っております。体調の善し悪 しか、唇周辺の善し悪しか判断に苦しみますが、微妙な楽器なのに驚くばかりで す。毎日の練習を忠実に実行して何年になりますか、最近やっとその成果かなと 思えるような音色に出会えました。やはり道のりは遠いものですね。雑感にて恐 縮ですが、お便りさせて頂きました。

尺八吹奏と丹田呼吸 −−会報37号を読んで−− 神田 重陽 

『尺八吹奏の基礎』の中の「偏心角」「口腔前庭」についての論説は誠に有意 義であり、これに基づいて「毎日のウーミングアップ」を行えば必ず尺八吹奏の 技術面の向上は確実であります。私も大変に勉強になり、実証済みであり感謝し ております。

・「腹式呼吸」について 私の長年の座禅の経験より丹田呼吸について申せば 、下腹部(丹田)は吸気の時も呼気の時も常時張っていなければなりません。呼 気にて腹部がへこむ状態では丹田呼吸ではありません。丹田呼吸は上半身は脱力 の状態でありますから、両肩の力は抜け、頭の中は空っぽになるのがよろしいの です。 また、尺八吹奏時だけでなく平常底において、いつでも・どこでも丹田 呼吸をするように心がけ、実行すると大変によいと思います。・「高音を小さく 吹く」、「現代の演奏家に対する忠告」 説の通りであります。小さい音(ピア ニシモ)というのは、単に音量が少ないということではなく、丹田呼吸によるピ アニシモは良く響き、充実した美しい音色がするものです。−その人の人間を語 る深い音楽的な音で、その人の高い心で感ずるままに演奏される音楽が聴く者を 感動させ、それが心の平和、ひいては人間の平和につながる−というのはもっと もであります。 一言申せば、良い音楽とは只美しいだけではありません。美と 醜・浄と穢・憎と愛・楽と苦・明と暗等々、人間のもつ心(分別心)を音により 表現し創造するものでありますが、最終的に目的とするところは、二元対立を越 えた、絶対平等・和平の心(無分別心)であります。ここのところを普化宗では明暗双忘・一音成仏と申すのであります。



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