会報 No.29

三曲合奏の時 唄を聞くために 藤田 昴寿

「唄をよく聞きなさい」とは頻繁に言われることです。ところが「どう聞き、 演奏にどのように生かすのか」という技術論が余りに不足です。 会報39号の 「地歌の都山譜は耳障り?」も技術論の欠如から起こる問題と思いました。 

ここで私は都山譜の手付けが敬遠されやすい要因と考えるところを一つだけ申 し上げたいとおもいます。勿論、優劣を言っているのでは有りません。都山譜演 奏上、陥りやすい盲点を問題にしているのです。  今更確認するまでもないこ とですが、唄方は節(ふし)の要所要所で律動の単位を切り替えたり、ゆらした りしながら味を出しています。この時、勝手に切り替えるのではなく「合わせ口 」をつくります。 思うに、合わせ口のつくりかたは(もう、思い切って整理し てしまいますが)、いわゆる「イー、ヤー(前・後拍)」か「ヤー(後拍)」の 2種類です。絃方の先生がひざを叩きながら言っているあれです。(なぜ「一拍 」と「半拍」とは言わないかといいますと、「ため」の感覚を内包したいからで す。よく糸の先生はひざの上で手を一瞬止めて「ため」をつくっています。)  このどちらかを単位にして以後の律動を決めるのです。(必ずしもこの通りにな らないので苦労するのですが。)  
合わせ口の時、琴古流手付けは大抵の場合、音を延ばしたまま合わせ口を聞く ことができるようになっています。このため「イー、ヤー」「ヤー」の動きを、 譜面上の点を追う動きと同調させて変化に対応することができます。(警告しま すが、聞きやすい手付けだからといって、よく聞いている人が多いかというと全 然そうではありません。)  
一方、都山流手付けの場合、合わせ口にも音をつけていることが多いのです。 (会報39号の譜面でいえば @1行目第3小節最後のD A2行目第1小節の ハロ B2行目第4小節のはじめのレ C2行目第5小節の最後のロ D4行目 第4小節のロ  よほど注意して音を殺し、しかも唄方の仕掛ける律動のゆれ( 切り替え)に対応しなければ効果は上がりません。尺八が律動を増した分、合奏 上の責任も増しているのです。 結局はやはり尺八方の音楽性と技量が問われて いるのです。


(中島 謙造氏より) 邦楽ジャーナルの記事の中で「循環呼吸」というのが ありましたが、どんなことなんでしょうか。
●(お答えします) 一言で言いますと、「息を出しながら息をすって音が途 切れないように連続して延々と吹く」ことです。 この技法は尺八では全く必要 有りません。インドのたて笛で使う技法です。永遠に続くものに対する好みから 発達した技法だと思います。 技術的には吹奏中、一時的に頬に空気をため空気 を押し出す間に鼻から息を吸うのです。そして吸ったらすばやくまた普通の息に よる吹奏に移ります。そうすれば永遠に途切れなく吹奏できるわけです。

お便り紹介 (匿名)尺八について悩んでいること。「五線譜をやはり勉強し なければ、今後ついていけないのではないでしょうか?」
●そんなことはないと思います。私などは若いときに五線譜に親しんだだけの ことでして、かえって古典を吹くときに平均律(ほぼピアノの調律)になりがち で古典のよさを無くしなねないということもあります。 また、古典の曲を聞く ときにも明暗流の 谷北無竹師のツメリを高く感じて違和感を持ったり、地歌の 名人の歌を低く感じて馴染めなかったりというように、鑑賞の妨げになるときも あります。 ですから、現代曲などをするので無ければ五線譜は余りいらないと 思います。 ただ五線譜に親しんでいますと、西洋楽器との合奏や歌曲を吹くと きに便利なことは確かです。自分の吹きたい曲が何かと考え、もし必要でしたら ゆっくり勉強していって下さい。 貴志 清一

(植田 氏より) 会報33号安藤氏の「地歌吹奏時の、拍子外音符の技巧に ついて」がたいへんよかったです。 会報の中で「なるほど」と思う記事を有り 難うございます。論説などは書けませんが、諸先生方の記事でいい勉強をさせて いただいてます。

(秋山 氏より) こちら高松で、都山流などの方とのおつき合いがあります が私のいきかたとはいささか異なり流行歌なども吹いてみたいとはおっしゃりな がらも五線譜で歌曲を吹くというような話をしても殆ど通じません。折角会報に 論説を取り上げて頂きながらどれだけの人が関心を示して下さるか、少々不安で もあります。 さて大島の菊地さんとはほぼ同年輩ということもあって意気投合 し文通やらテープ交換もしております。 先日はまた当県の植田さんが七孔尺八 のことで訪ねてきてくれました。尺八吹奏研究会のおかげでそうした交流も実現 しております。改めて厚く御礼申し上げる次第です。


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