会報 No.30

悪い癖を直す時の注意 貴志 清一

本当にその癖がどうしょうもなく悪いのでしょうか
(K氏より)尺八吹奏の悩みとして次のようなお便りをいただきました。 「 尺八を吹くとき、変な癖(アゴを前に出す吹き方で、自分では直そうとしており ますが・・・)がついてしまい、今はそれを直そうと懸命の努力中です」  

さて、癖と言うのはいろんなものがあり、一概に悪いとも言えないものもあり ます。 私のVTRをご覧になられた方はお気づきだと思いますが、私はかなり 唇を左右ずらして吹いております。そのため尺八をまっすぐ持てないので、体を 少し斜めに構えて何とか尺八だけは垂直になるようにしております。 ものの本 によりますと、息の出るすき間は唇の真ん中でなければならない、そうでなけれ ば左右の唇の筋肉が不均等になって音のコントロールに重大な欠陥が出る。そう いうふうな内容のものを読んだことがあります。 しかし、それは初歩の段階で の注意点で、最終的には良い音が出て・自由自在なコントロールが得られれば良 いのです。 著名な演奏家でも唇のど真ん中で息を出している人を見つける方が 難しいくらいみんなそれぞれ何らかの癖を持っています。それは、良い音・良い 演奏を心がけている内に自然とそういう形になったものだと思います。  余り に良い音・良い演奏を妨げる癖は悪いのですぐ直すべきです。しかしK氏の例で 言えば、もしかしたら唇の周りの筋肉にとってやや前に顎を出す方が自然な形で ある可能性もあるのです。  (本来、実際お会いして、判断しなければいけな いのですが) あくまでも仮定の話ですが、もしも唇の周りの筋肉にとってやや 前に顎を出す方が自然な形であるならば、その状態で良い音・良い演奏ができる ように努力したほうが結果的には大いに上達が望めると思います。  

その音作り・コントロール作りの為には、「毎日のウーミングアップ」が今の ところ役に立つと思います。 乙のリ(都山ハ)の音を何回も何回も伸ばすロン グトーンの練習をします。それから、一音一音丁寧に下降します。 リ・チー  リ・チ・レー リ・チ・レ・ツー リ・チ・レ・ツ・ローそれから甲音にむかっ て一音ずつ音を鍛錬していきます。その時に、アゴ・唇のことは考えないで、ひ たすら息が唇の内側の粘膜を通っているか?をチェックするのです。  そして 耳は少しの油断もなく「今出ている音は良い音か、そうではないか?」を聞き続 けるのです。  私もそうですが、おそらく良い音の時は少ないと思います。自 分の良くない音を聴き続けるのは辛いことですがそれを我慢するのが、練習だと 思って下さい。 私も偉そうには言えなくて、ややもすれば自分の音を聴き続け る辛さから逃れようとして自分の音を聴いていないときもたまにあります。しか し、ともに頑張りましょう。 そして、良い音が出るようになればご自分の演奏 を録音してお送り下さい。 繰り返しになりますが、顎を出す癖を何とか直そう とするあまりアゴを出さないようにすることばかり気にして、本来の良い音色・ 良いコントロールを得ることがなおざりになる危険性があります。  良い音を 出そうとして、結果的にアゴがいつの間にか前に出なくなったというのは良いの ですが、アゴを引いたらきっと良い音になるだろうという何の保証もないことを 目標にしてはいけません。 下手をすると、アゴは確かに前に出ないが肝心の尺 八の音は貧弱になったでは何をやっているのか分からなくなります。 練習は、 良い音・曲を吹くための自由自在なコントロールを得るためにするという大原則 をお互い忘れないようにしましょう。


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