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「2016年秋季 貴志清一尺八演奏会の紹介(音源4曲付)」

 2016年11月13日日曜日。
 秋の穏やかな天気に恵まれた小さな演奏会でした。
 会場は大阪府泉佐野市の文化財住宅(江戸後期)・新川家で尺八のような邦楽器にふさわしい場所でした。
 1時間前に到着しますと、ちょうどオーストラリアからの見学者が3人日本家屋を熱心に見ていました。私の怪しい英語で
「Now just, I have bamboo flute, Shakuhachi, so I play one music, OK?」
(いま丁度尺八を持ってますので一曲演奏させていただきましょうか」のつもり)といいますと
「ゼヒ、オネガイシマス」との答えが返ってきました。
 "そうか、このオーストラリアの人、日本語を話せるンや"と分かり、とにもかくにも「手向」を吹奏しました。
 演奏後、たいへん感激されたようすで「ホントニ、日本ラシイ、オンガクデシタ」と何回も何回もお礼を言ってもらいました。
 技巧の巧拙は別にして、吹き手は「聞いてもらえると嬉しい」、聴き手は「聴かせてもらって嬉しい」という自然な関係が音楽の基本なのだということを再確認した次第です。
 音を仲立ちにして人と人の間に関係ができるという音楽のすばらしさも実感しました。
 "人間"は"人と人の間に生きている"、そしてその人と人の間に良い関係が持てれば人間は幸福を感じることができるのだと思います。
 現実はそんなに生易しいものではありませんが、せめて今日の演奏会にお越しになった方々には「よい時間」を持って頂くようしっかり演奏しなければならないと思いました。
 
 前置きがずいぶん長くなりました。
 38年間、病気や多忙の日以外はたとえ5分でも竹に息を通してきた音楽好きの一人の尺八愛好家が自分の吹きたい曲を聴いてもらうという小さな演奏会です。
 当初は10人ぐらいのお客さんかなと思っていましたが当日20数人の方がお聴き下さいました。アマチュア冥利につきるかと感激した次第です。
 それでは、今回の演奏曲7曲の中から4曲紹介させていただきます。
 箏は30年来のお付き合いの高い音楽性とすばらしい音色、高度な技術をお持ちのN師の演奏です。N師には、紙面をお借りしましてご協力御礼申し上げます。 

○弥生の笛と尺八古典本曲「手向」
                     (地無し延べ竹節残しの二尺四寸管 河野玉水作)
1966年、下関市の綾羅木遺跡から2100年前の弥生前期ごろの土笛が出土しました。「陶けん」とよばれ中国の土笛に同じものがあります。九州~山陰~京都北部にかけて約70点出土しています。
 その柔らかい音色は尺八の中音域と共通しているようです。

(音源ファイル「手向」)
http://www.jm3.org/bmbnt/music/354-tamuke20161113.mp3

○鹿笛と「鹿の遠音」
                     (地無延べ竹節残しの一尺八寸管 河野玉水作)
縄文後期の佐賀(さか)貝塚出土の鹿笛は、平たい板にガマガエルの皮などを張って吹き口から息を入れ、「ぶーぶー」という雌ジカの鳴き声に似た音を出す楽器です。この笛で雄鹿をおびき寄せるのですが、徒然草に「女のはける足駄にて作れる(鹿)笛には、秋の鹿、必ず寄る」とあります。「鹿の遠音」で高音は雄ジカ、途中の乙音のフレーズは牝鹿の鳴き声でしょうか。いずれにしましても「奥山に、紅葉踏み分け、鳴く鹿の声聞く時ぞ、秋は悲しき」思いが竹の音に籠もっているようです。

(音源ファイル「鹿の遠音」)
http://www.jm3.org/bmbnt/music/354-shikanotoune20161113.mp3

○「惜別之舞」(宮田耕八朗作曲 地無し管)

 (音源ファイル「惜別の舞」)
http://www.jm3.org/bmbnt/music/354-sekibetsunomai20161113.mp3

○(終曲).「キビタキの森」(宮田耕八朗作曲)
                                       (七孔一尺六寸管 河野玉水作)
 おそらく宮田耕八朗師の名曲で、「春の海」のように永らく演奏し続けられる曲だと思います。
 楽譜を見ますと「カデンツは各自で考える」とありますので、稚拙ですが自分なりに鳥の声をイメージして吹いています。

(音源ファイル「キビタキの森」)
http://www.jm3.org/bmbnt/music/354-kibitakinomori20161113.mp3