会報 No.39

論説 琴古譜の弱点と利点 藤田和明


はじめに

  4年間お稽古を中断したことがあります。いろいろ理由はありますが、一つに琴古譜にはほとほと嫌気がさしたということがあります。ここで言う琴古譜は古曲(箏曲・地歌)に手付けしたもののことです。そのまま古曲とさようならしてもおかしくありませんでした。でも、ふとしたところから縁がつながり戻ってきました。
 わたしは現代曲は都山譜、古曲は琴古譜を使用します。現代曲の琴古譜はぞっとするのに対し、古曲は琴古譜でなければ吹きたくないともで思うようになりました。
 ここでは琴古手付け譜の弱点と利点をあげ、特に東アジアに良くみられるリズム感(決して日本人すべてのとは言いません)に根ざした譜面であることを強調したいと思います。

(弱点)

 琴古譜の弱点を列挙します。白譜のことを述べるので、青譜には当てはまらないことがあるかもしれません。
1,都山譜にくらべ、曲が早くなればなるほど譜面を早く追わなくてはならない。都山譜のように面積でつかめないので苦しい。

2,似通った音名がついているものがあり、紛らわしい。

3,「打ち改め」というものが出てきて、以後の譜面を倍速に変換して読んだり、あるいは二倍ゆるめて読まなくてはならない。

4,譜面上は一拍に書いてあるのに、脇に「実は半拍子」などと書いてあることがある。

5,譜面上は普通のチなのに、箏・三弦の転調をとっさに判断してリメリ(都山のハメリ)として吹かねばならないことがある。

6,附点音符と装飾音符の書き分けがきちんとされていないことが多い。

7,生田流、山田流の別を一つの譜面に書き込むため、視線が斜めに移動するなど見にくい。

(利点)

1,丸点(・)とゴマ点(、)の区別があり、押し出す音と沈める音の区別がつく。これによりフレーズの表情付けがわかる。

2,ブレス線(−)(これはブレス線なのでしょうか?)が熟慮の上、書き込んである。ほぼ三弦のフレーズに対応しているので、曲想がつかみやすい。スリ手などの関係で無視することもあるが、切れ目は意識して吹く。

次の3が特に強調したいところです。
3,古曲の持つリズム感に、素直に従った譜面である。

(結語)

古曲におけるリズム感を私なりに述べますと、
「いわゆる一拍(分数で言う一という単位)の中にも表拍(イー)と裏拍(ヤー)(=偶数のくさびを入れる)、拡大、縮小、ゆらし(ゆらしについては会報42号で触れました。)の動力源として用いるリズム感」ということになります。琴古譜はこうしたリズム感を記号化したものです。だから数々の弱点を抱えながらも最も古曲になじむのです。

 欠点の3こそ琴古譜の本質と申せましょう。
 また欠点4は、拍の表、裏に敏感であるために「曲の中で、偶数倍あるいは偶数分割で処理できないイレギュラーな表裏の転換があったとき」書き込まれるのではないでしょうか。
(余談ですが、ここまで考えれば「都山手付け譜が4/4拍子で記譜されていてもなぜ支障ないのか」ということも明白です。)


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