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                         大峰尺八修行
                                                                    貴志清一
 
2019年5月27日。
 毎年梅雨入り前の天気の良い日は奈良県の大峰山へ行っています。

※関連会報 365号 341号
今年は洞川の奥、五番関から洞辻茶屋を経て山上ヶ岳にお参りし法力峠から洞川へ下るコースをとりました。
 尺八をいざという時の支えとして登り、誰も周りに人がいない時は吹禅風に大自然の中で吹くといういつもの登山です。
 五番関トンネルからいきなり直登で女人結界にでます。
(画像1,2)



 尾根に出まして行場を過ぎ、あとは緩やかな登りが続くはずでしたが地図の高低差を甘く見すぎていました。鎖場がいくつかあってなかなか厳しい登りなのですが、その稼いだ高度分だけまた下るのです。1回ぐらいですと登攀意欲も持続できるのですがそういうのが数回続きましたので登高本能もどこかへ飛んでいってしまいました。
(画像3,4)



 誰もいないので休憩がてら地無し尺八の音出しを始めました。山深い新緑がまぶしい尾根で吹くのは何とも気持ちのいいものでした。

そのときの音出しの音源:
http://www.jm3.org/bmbnt/music/402-omine-2019-5-27.MP3

 鳥のさえずりを邪魔しないように1分ほど目をつぶって吹いていますといきなり「ブーーーン」という音と共に喉をアブに噛まれました。山のアブはすごく大きい感じで帰ってから3,4日は痛痒さがとれませんでした。
 尺八修行どころではなくなりましたので早々リュックを背負って歩き出しました。やっとのことで洞辻茶屋へ着きました。
(画像5)

アップダウンにうんざりしていましたのでこのまま清浄大橋まで下ろうか迷いましたがとにかく早めのお弁当にしました。
 家から持ってきたお弁当を食べたら急に元気がでてきました。やはり人間 食べなければだめですね。
 予定通り鐘掛け岩をすぎ、西の覗きの絶壁からの景色を楽しみ頂上の大峯山寺に着きました。
(画像6,7,8,9)







 丁度令和元年の即位のお祝いに秘仏の蔵王権現が開帳されていました。良いときに来たものです。お守りをいただいて下山にかかります。
 急な下りをしのぎますとレンゲ辻坂の鞍部に出ます。ここから北面の坂道をとりますと1時間半ほどで清浄大橋に出れるのですが、そして魅力的な時間短縮コースなのですが、絶対ダメ!
(画像10)

 実際数年前にこのコースを登りに使ったのですが、鞍部直下は急登でしかも足を滑らすと2,30メートルはある谷へそのまま落ちていきます。しかも登りですらコースが不明瞭ときています。体重がそのまま下方向にかかる下りは危険そのものです。稲村ヶ岳から女性を交えたパーティですとこのコースしかないので難しいところです。
 ここからは少々楽な道で50分もすると山上辻にでます。そこに有人小屋の稲村山荘があります。
(画像11)

 あとは膝の痛みをごまかしながら法力峠を通って洞川にでました。
 車道なのですが、途中めずらしい「オオルリ」と「カケス」に出会いました。バードウォッチャー初心者の私としてはたいへん嬉しい出会いです。

(画像12,13)




 村営の温泉で露天風呂に浸かり、その後食堂でビール片手に無事下山を祝いました。
 40年程前に弥山から絶対下りてはいけない弥山川を降りて死にそうになったことを思い出しながら5時58分の最終バスで帰路につきました。
< 上記[弥山川]のリンク先334号の弥山川下りの本文から転載 >
「1980年ですから今から36年前、私は弥山にたった一人で登りました。弥山小屋で泊るまでは良かったのですが次の日、あろうことか弥山川を 下るというとんでもない下山道を選びました。無知ということほど恐ろしいものはありません。熟練した沢登りの上級者でもこの弥山川は登りにしか使いませ ん。それを山登り初心者なみの若者(馬鹿者)がたった一人で下って行ったのです。今でこそ鉄のしっかりした階段などが要所要所に架けてくれているのですが 当時は整備もいい加減なものでした。
 
 いちばん危なかったのは双門の滝付近で次の踏み跡まで高さ数mも何にもないところに出てしまい、戻ることもままならない場所でした。今こうしてワープロを打っていても当時のことを思い出し手に汗ばんできています。残る手段は草を掴んで直登に近い登りだけ。リュックは装備・食料・燃料と15kg は有ったでしょうか。両手で草を掴みながら足で高さを稼ぐのですが足がスリップする度に「もうあかん」と心で叫んでいました。もう少しで平らなところなのですが筋肉の消耗が激しく力が入りません。少しでも力を抜けば100、200メートルはあるかと思う双門の滝に真っ逆さまです。このときばかりは「死」を 覚悟しました。言葉ではなく体全体で「ああ、ここで死んでいくのか」と感じました。力を抜かずに滑落の恐怖と戦っていたのですが、もうダメかと思った地点 は平になった踏み跡のすぐ手前でした。助かったのです。心身ともにぐったりとなりしばらく呆然としていました。
 しかし早く下山しなければと気を取り直し、危ない箇所も多々あったのですが何とか死にものぐるいで下って行きました。本当はその日に河合のバス停に出る予定でしたが疲労困憊ということでその日は河原でビバーグです。食料は豊かに持っていました(だから重い!)から遭難ではありませんが、まあ半分遭難したようなものでした。
 今から思えば尺八の神様なんかが「この子は、もうすこし生かして尺八を吹かせよう」と閻魔大王に掛け合ってくれたかも知れません。」