会報 No.42

紹介 西洋音楽の拍の強弱と日本の拍について 貴志 清一 



 会員の方より「拍」について以下のようなご質問をいただきました。

お尋ねします。
地唄の吹奏におきまして洋楽みたいな強・弱があるのでしょうか。
例えば「千鳥の曲」の最初でいいですからご教示下さい。

 おそらくご質問の意味は、
「西洋音楽では2拍子であれば、強・弱の繰り返しで演奏する。だから、日本の音楽でも尺八でもって表拍・裏拍を強・弱と吹き分けるのだろうか。」という風に理解いたします。

 結論的に言いますと、
一つの楽器では西洋音楽でも、強・弱だからといって単に音を強めたり、弱めたりすることはしません。 ですから、洋楽でもしないことを日本の音楽はするはずはありません。
ご安心下さい。今まで通り山口五郎氏や松村蓬盟氏が吹くように古曲を吹けばいいのです。
 
さて、その意味を少し考えていきましょう。
 もともと西洋音楽の拍の頭は”強調された音”ということです。
 その”強調”の仕方は和音進行であったり、合奏であれば低音で頭の音を入れたりします。
たとえば2/4 : 2拍子であれば普通(強・弱)の繰り返しなのですが、だからといって旋律は音の強さとして強・弱と演奏しません。
 あくまでも旋律は1拍目も2拍目も殆ど同じ強さで演奏されます。
 たとえばシューベルトの「鱒」ですと旋律はほとんど同じ強さで演奏されますし、2拍子の”強調された音””強調されない音”は伴奏形として表現されます。

 ですから旋律を強めたり、弱めたりする強弱は西洋にもないのですから、勿論旋律楽器である尺八を吹くときには強弱はほとんど気にしなくてよいのです。
 日本では、藤田和明氏も述べているように”表・裏”拍の感じ方があるのですが、その”表・裏”は旋律の形で表されたりします。そのために息盗みが適切であればよいのです。


 「千鳥の曲」を表拍、裏拍を上手な糸方の演奏を聞いて感じれば自然と尺八でもうまく演奏できるものです。

 また、話は飛びますが本曲でも自由リズムとはいいながら、やはりゆったりとした拍はあります。それは、丁度寄せてはかえす波のような拍です。
 マルコ・リーンハード氏の「手向け」を聞くとその所がよくわかります。

 何度も繰り返しますが、旋律楽器の音量による強弱は西洋・日本とも存在しないことを強調します。
 
 その意味では、文字どおり強弱の音量差をオーケストラの編曲で(例、小節の頭にティンパニをもってくる)表現しやすい西洋音楽は聞いていてこの拍子がよくわかるのです。
 

★「拍」に関して京都の清水氏からも示唆に富む有意義なお便りをいただいておりますので紹介させていただきます。

(清水氏より)
 先般 菊原初子さんのお話を聞かせていただいた中に
「この曲(ままの川)は4分の4拍子とか言う人がいるけれど、地歌に4/4拍子というものはないのです。 確かに譜面(糸方、都山も同じ)を見るとそのようになっているかも知れないが、それは目で見て覚えるからで、聴いて耳から覚えればそのようなことにはならない」
ということでした。
 会報60号の藤田和明様ご寄稿「古曲の持つリズム感」中の桜井哲男氏の『アジア音楽の世界』や、会報62号・藤田博文様のご寄稿中の茂手木潔子氏の『袖の露』の解説等を読ませていただき、専門的で難しいのですが私なりに理解させていただいたように思います。
 
 ★菊原初子氏といえば地歌の第一人者でいらっしゃいます。なるほど都山譜を見ていますと4/4拍子のようですが、耳から覚えなければならないのですね。いいお話を有り難うございました。(貴志清一)
 


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