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     ヒャラーリ ヒャラリコと桔梗幻想曲を吹く        貴志清一

 古典尺八本曲も幽玄な趣があって繰り返し吹いても飽きのこないレパートリーなのですが
福田蘭童の「桔梗幻想曲」もなかなか面白いものです。
数年前に「桔梗幻想曲」を吹いていたこともあったのですが、作曲者福田蘭堂の経歴を調べてみるとあんまり感心しなかったので、
その後、全く吹かないでいました。
 音楽や芸能において、個人の素行行動歴でその人の芸や作品を評価するのはまったく愚の骨頂なのですが、
何となく福田蘭童から遠ざかっていたわけです。
 ただ、私の所にお稽古にきている弟子の課題にと適当な曲を探していましたが「桔梗幻想曲」が取っつきやすい曲ですので
それに決め私も久し振りに吹いてみました。
 まだまだ楽譜を見ながらの熟れない試奏ですがお聴き下さい。吹料は華やかな音色の地塗り一尺八寸管・河野玉水作

 (音源:「桔梗幻想曲」)
http://www.jm3.org/bmbnt/music/424-kikyou.MP3

 さすがに「童」という免許皆伝をとった奏者ですのでなかなか味のある曲作りをしています。
これは福田蘭童が放送関係のアルバイトをしていたことと関係あるのでしょう。
 70才以上の方なら知っている「笛吹童子」。
 このラジオドラマの主題歌は福田蘭童が作曲し、伴奏の尺八は自分で吹いています。

https://www.youtube.com/watch?v=NohrUHw0PAc
 
 笛吹童子(ふえふきどうじ)は北村寿夫(きたむらひさお)の脚本によるラジオドラマでNHKの新諸国物語の第2作として
1953年(昭和28年)に放送されました。
 ちょうど私の生まれた年です。 放送期間は1953年1月5日 - 12月31日。 主題歌「笛吹童子」は作詞:北村寿夫、作曲:福田蘭童。

〈解説に依りますと〉
 時は室町時代、応仁の乱のころである。丹波国の満月城の城主、丹羽修理亮は野武士に攻められ、
城は落ちた。彼には20歳そこそこの2人の息子がいる。兄は萩丸、弟は菊丸。武芸に秀でた萩丸は敢然と立ち向かうが、
弟の菊丸はちがった。「武士なれば戦もしなければならぬ。戦いはいやだ。わたしは武士をすてて面作りになる」と言い残して
都に暮らし始める。菊丸は笛の名手である。笛の音で濁りや汚れに満ちた人の心を洗うのであった。
笛は師から伝わる名笛、春鶯囀(しゅんおうてん)人々は彼を笛吹童子と呼んだ。

 主題歌の歌詞は「ヒャラリヒャラリコ」で始まります。
ひゃらり=ひやらり=横笛の音名らしいのですが、一節切ですとヒ(B)ヤ(G)ラ(下から2番目の穴を打つ)リ(A)の運指名です。
 ヒャラーリヒャラリコはいわゆる唱歌(しょうが)といわれるもので、音名や運指を言葉にして覚えやすくするものです。
 「チリトテチン」が三味線なら「テントンシャン」がお琴ですね。

また今年はここ泉州でもだんじり(地車)や櫓(やぐら)のでる秋祭りが悪しきコロナ禍により軒並み中止となりましたが、
その村祭りの小学校唱歌「むらまつり」の歌詞の中に 「ドンドンヒャラリ ドンヒャラリ」とあります。
ドンは太鼓。ヒャラリは笛吹童子と同じ横笛の唱歌(しょうが)です。

 ちなみに「笛吹童子」の登場人物の中に「桔梗(ききょう)」という女の人がでてきますので、
何か「桔梗幻想曲」と関係があるのでしょうか。
 福田蘭童の作曲ですのでこの「桔梗幻想曲」はやはり"ヒャラリヒャラリコ"と軽やかに演奏するのがコツのようです。

 さて、主題歌の2番の歌詞。
2 ヒャラリヒャラリコ ヒャリコヒャラレロ
どこで吹くのか 笛吹童子
 ヒャラリヒャラリコ ヒャリコヒャラレロ
 金と銀との 蒔絵(まきえ)の笛だ
ヒャラリヒャラリコ ヒャリコヒャラレロ
  ■タンタンタンタン タンタンタンタン
  ■蒔絵の笛だ

 笛吹童子が吹くのは「金と銀との蒔絵の笛」なのですが、映画などでは主人公の姿を美しくするために横笛を使っています。
 本来、これは尺八でした。尺八の高音域と横笛の音色はよく似ています。
そして時代は応仁の乱ですから、尺八と言えば「一節切」の尺八です。応仁の乱から安土桃山にかけては
一節切尺八の全盛時代で多くの名管の記録が残っています。
実物としては織田信長愛用の「のかぜ」や朝倉義景が嫡子愛王丸に一乗谷落城の時に託した「鳳墜」。
これらは漆に金で銘をいれています。
 私所持の一節切古管もその例にもれず漆塗りで銘〈瀧颪〉を入れています。
漆を一節切の表面に塗ってしまうと本来の竹の音色が少し変わると思うのですが昔の人は余り気にしなかったのでしょうか。

 (一節切「瀧颪」の写真)


 この「桔梗幻想曲」は一般の邦楽に馴染みの薄い人にも分かりやすい曲ですので
2020年11月21日(土)午後1:30開演の私の演奏会でも吹こうと思っています。
それまでに「作曲者の素行に関係なく」しっかりと暗譜するまで毎日練習したいと考えています。

 演奏会の記事は次のHPをご覧下さい。
   ↓
第16回令和ルネッサンス in 佐野町場開催のお知らせ