会報No.62

 音がかすれる……原因と克服法
 付:ツメリが高い……その直し方
貴志 清一
 本会K氏より以下のご質問をいただきましたので、お答えさせていただきます。
 「先日、地方のあるコンクールの予選で『木枯』を吹きましたが、講師の批評は、音にかすれが多いと言うことでした。
 人前の演奏はほとんど経験が無く、あがってしまい、竹を持つ腕の震えをどうしても押さえきれなかったことも一因と思いますが……
 日頃、かすれが多いことは気にはなっています。
 原因と対策を指南してください。
 
 また、都山流のツ(E♭にほぼ近い音)が高いと師匠からよく言われます。 この音の運指(指使い)とメル ことの関係はいかがでしょう。都山の教本にはメルことは書いてありません。
 師匠も指の半分程度のかぶせのみと言いますが、多くの人はメッているように見受けますし。
 また、その方が音が下がるように思います。
 しかし、メッては速いテンポなどは運指(演奏)困難のように思います。
 正しい方法はいかがでしょう。
 以上、二点について悩んでいますので、ご回答願います。
 
 以上、引用が長々となりましたが、この種の質問は尺八吹奏上大切な問題ですので、私の意見を述べさせていただきます。
 
さて、音にかすれが多い原因はおそらく、下歯が息の流れを阻害していることでしょう。
 私も気を許しますと、音にかすれが多くなります。
 自分自身の為の“下歯による気流の乱れとその克服法を「尺八吹奏法T」等から要約します。
 (詳しくは原本をお読み下さい。文末入手法記載)
 
 尺八吹奏で大切なことは以下の2点です。
@「唇はしっかり支えるのだが、唇の赤い部分には力を入れないこと」
A「下歯が息の流れを絶対阻害しないようにする」
 下歯が息の流れを阻害しますと、音がかすれ、音量もなく、甲音も苦しくまた、乙ロは朗々と出ません。
 
 ところでこの@Aは習得することが難しいものです。
 しかし、この@Aを体得するきわめて効果的な方法があります。 それは「口笛を吹いて息の流れを感じる」ことなのです。
 これはすばらしい方法で、フルートの神様といわれたM.モイーズが述べているやり方です。
 一日に10分以上注意深く口笛を吹いて下さい。きっと良い結果が尺八に現れると思います。
 唇の赤いところに力を入れると尺八の音が悪くなりコントロールも効かなくなります。それを口笛練習によって「唇の赤いところに力を入れ無い」感じを体得するのです。
 また、口笛練習はAの「下歯が息の流れを絶対阻害しないようにする」感じを体得する最良の方法なのです。口笛を吹いているときは、ある程度下顎が下がりますが不自然には感じないはずです。尺八でも口笛と同じ下顎の位置で吹きましょう。上唇の丸みさえあればビュウビュウ尺八が鳴るはずです。
 
 音がかすれて貧弱な場合、下歯が息の流れを阻害していないかどうかということが問題になります。私は下歯のよる気流の阻害を避けるために口笛による訓練で解決しています。
 ややもすると下歯が息の流れを阻害するものなのです。尺八を吹いている口のまま、息の出口から爪楊枝をそっと差し入れて下さい。もしそれが下歯に当たるようでしたら明らかに「下歯が息の流れを阻害して」いるのです。
 
 つぎに、口笛を吹いて下さい。口笛を吹いている時にやはり同じく爪楊枝を挿入しますと下歯には当たらないはずです。この感覚が大切なのです。尺八吹奏の基礎(最終回)の「梅干しの口」によってこの「下歯による息の流れの阻害」を克服していました。
 今は口笛による感覚と訓練で解決しております。 
 
○ツのメリについて
都山の教本にはメルことは書いてありません。」とのことですが、書いている本もあります。
 世の中の全ての教本を見たのなら別ですが、なかなか一人の人間では不可能です。ですからたまたま自分の教本に載っていないだけだという判断も必要です。
 私の狭い知識ですが、昭和9年発行
『都山流を基礎としての尺八独習』と言う本には“半音はメル”と明記されています。なんと60数年前に記されているのです。
 この本は私の蔵書です、参考までに原文を会員配布の会報には掲載しています。
 (インターネット上は都合により、掲載しておりません。)
 都山流の人で感慨深くお読みいただける人もいらっしゃるのではないかと存じます。
 
 さて、「師匠も指の半分程度のかぶせのみ」と書いていらっしゃいますが、本当に師は半分程度かぶせているのでしょうか。
 お稽古の時は師匠の吹き方を盗まなければなりません。目を皿のようにして師匠の手元を一度見てください。
 正確なツメリをお出しになられる師匠なら、おそらく指は4分の3ほど孔を塞ぎ、歌口の面積を狭めていらっしゃることと思います。
 
 もし、私が同じように「メリ音はどの程度指を塞ぐのですか?」と質問を受ければ、やはり
「一の指は半分くらいかぶせて、遠くからわかるほど首でメリをしないで吹きなさい。」と言うでしょう。
 遠くからわかるほど首を上下させると速い音符は吹き切れません。
 歌口の面積を変えることによって、しかもそれを無意識的にできるようにしてツメリを出すのです。
 お稽古の時はもっともっと師匠の演奏を穴があくほど観察しましょう。
 これは断言しておきますが、「指の半分程度のかぶせのみ」とおっしゃったお師匠さんは“真実を言っている”のだと思います。
 これからは、稽古時、全身全霊を傾けて下さい。
 
 さて、これも随分前にくわしく書きましたが、ツメリの合理的な出し方練習法を簡単に復習します。
@ツの全音の音で立派な音を出す。
A次にツの全音を出し、歌口だけで音を下げる。(ほぼツの中メリ音)
B今度は歌口だけでツの中メリ音にし、そのまま一孔を塞いでツメリまで下げる。
C何千回とこの練習をしたら、いきなりツメリを出してみる。
 
 以上のように練習をしっかりした師匠の元で繰り返すと自在にツメリが出来るようになる。
 すると、「メッて速いテンポなどは運指(演奏)困難ではなくなる」のです。
 幸い、ツメリが高いとご指摘される立派なお師匠さんについていらっしゃるのですから、もっともっとご自身がしっかり練習しましょう。
 
 以上、回答が長くなりましたが、そしてご質問されたK氏に対しては多々失礼に当たる言葉もあるかと存じますが、この文が何かのご参考になることを願っております。
 
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